ID番号 | : | 03302 |
事件名 | : | 地位保全金員支払仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 横堀急送事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 酒気帯び運転により交通事故をおこしたトラック運転手に対する解雇が有効とされた事例。 右解雇が労働基準監督署への申告を理由としてなされたものとはいえず労基法一〇四条二項に違反するものではないとされた事例。 労基法一九条の解雇制限期間中であっても解雇予告はできるとされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法19条 労働基準法104条2項 労働基準法89条1項9号 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務外非行 解雇(民事) / 解雇制限(労基法19条) / 制限期間中の解雇予告 雑則(民事) / 監督機関への申告と不利益取扱 |
裁判年月日 | : | 1979年5月31日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 昭和53年 (ヨ) 3562 |
裁判結果 | : | 却下 |
出典 | : | 労経速報1025号5頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務外非行〕 四 以上一応認定した事実に(書証略、被申請人就業規則)によれば、(一)申請人は、被申請人の指示により傭車運転手として配送センターにおいて積荷、物品の運送に従事していた際、同センターの配車係の指示を少くとも三回以上拒否したものであり、(二)また、飲酒後約二時間程して長距離運転に従事し、その酒量及び飲酒後の時間からして酒気を帯びて作業(運転業務)につき翌朝七時頃居眠り運転により追突事故を発生せしめたものであり、右(一)の事実は被申請人方就業規則三〇条四号、一〇号の解雇事由に該当し、また右(二)の事実は、その酒量及び追突事故の時間から考えて、事故発生当時酩酊もしくは酒気を帯びた状態での飲酒による直接の影響のもとに事故を発生させたものということは困難であり、従って右行為が前示就業規則九〇条一六号にいう懲戒解雇事由としての飲酒運転を行い事故を発生せしめたときに該当するということはできないが、服務規律を定めた同三七条五号(酒気を帯びて作業についてはならない)に違反し、同三〇条一〇号の解雇事由に該当する。 〔雑則-監督機関への申告と不利益取扱〕 五 申請人は、本件解雇の真の理由は、申請人の被申請人方における労働条件改善をめざす努力を嫌悪したことにあると主張し、疎明によれば、申請人は昭和五二年一二月同僚のAとともに被申請人代表者に対し給与として最低金一七万五、〇〇〇円を保障して貰いたい旨最低賃金保障の要請を行ったが、被申請人代表者の承諾を得るにいたらなかったこと、また、申請人が被申請人方における残業手当の計算根拠に不審を持ち昭和五三年五月一〇日頃被申請人取締役Bに対し就業規則の明示を求め、同年六月から七月までの間数回にわたり労働基準監督署に相談に行き、前記追突事故発生後約一カ月療養のため休業し、同年七月三一日被申請人方に出社し労災休業保障請求書を提出するとともに、残業手当については労働基準監督署から指摘された計算方法で計算しなおすよう申入れをしたことが疎明される。しかしながら、右最低賃金保障の要請は本件予告解雇の約一年前のことであり、しかも右要請に際し被申請人との間に紛争を生じたとの事実も認められず、さほど強力な要求であったともうかがえず、右事実によって被申請人代表者が申請人に対しことさら悪感情を抱いたとは考え難い。また、残業手当の計算につき申請人が労働基準監督署に数回相談に行ったことは前示のとおりであるが、右は被申請人方の残業手当計算根拠に不審の念を抱いた申請人が、被申請人方における労働基準法違反の事実の申告というよりは、被申請人方における残業手当計算を是正させる前提として労働基準監督署の指導を受けるために相談におもむいた程度のことであり、他に申請人が予告解雇を受ける以前に被申請人方の労働基準法違反の事実を申告したとの事実は疎明されるにいたらず、疎明によれば、被申請人代表者ないし被申請人取締役Bは前示事故発生直後に申請人に対し配送センターの件及び追突事故の件を挙げて被申請人方を辞めて貰う旨、解雇の趣旨をほのめかしていたことが一応認められるから、本件予告解雇が申請人の労働条件改善要求を嫌いこれを決定的理由としてなしたものということはできず、また労働基準法一〇四条二項に違反した無効のものということはできない。 〔解雇-解雇制限(労基法19条)-制限期間中の解雇予告〕 六 申請人はまた、本件予告解雇は労働基準法一九条の解雇制限の規定に違反した無効のものと主張するが、同条は解雇を制限するだけの規定であり、解雇制限期間中に解雇制限期間の満了する日、またはその日以後に効力を生ずる解雇の予告までを制限する規定とは解されないところ、疎明によれば本件予告解雇の意思表示のなされたのは解雇制限期間内である昭和五三年八月三日であるが、その予告の期間を同年九月三日までおいていることは前示のとおりであり、申請人が事故による療養のための休業を同年七月一日までとり、同年八月一日出社しているから、右予告解雇の効力発生の日は解雇制限期間である同月三〇日の後ということになり、従って本件予告解雇をもって労働基準法一九条に違反する無効のものということはできない。 |