全 情 報

ID番号 03317
事件名 地位保全仮処分申請事件
いわゆる事件名 住友重機愛媛製造所事件
争点
事案概要  整理解雇につき、その必要性および解雇回避努力の条件を充たしていないとして右解雇を無効とした事例。
参照法条 労働基準法2章
民法1条3項
体系項目 解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇の要件
解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇の必要性
解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇の回避努力義務
裁判年月日 1979年11月7日
裁判所名 松山地西条支
裁判形式 決定
事件番号 昭和54年 (ヨ) 13 
裁判結果 認容
出典 労働判例334号53頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-整理解雇-整理解雇の要件〕
 1、整理解雇の有効要件について。
 企業の経営は、本来経営者の専権に属するものであり、その一環として企業が業績不振に陥った際に取るべき方策を決定、実施することも自由になしうるところであるが、その一態様として実施される従業員の整理解雇は、従業員の責に帰すべからざる事由によって一方的にその職を奪うものであり、その従業員に対し甚大な影響を及ぼすものであるから、これが無制約になしうると解するのは相当ではない。特に我国の解雇関係の実情においては、年齢、性別、職種等による例外を除いて、大半の労働者は特段の事情がなければ、企業が存続する限り、当該企業に終身的に勤務することを期待して、企業と労働契約を結び、その賃金収入により自己及びその家族の生計の維持、さらには将来の生活設計をも託しており、他方企業においても右趣旨の雇用継続により、その労働者の当該企業に対する忠誠心や勤労意欲が高まることなども勘案して、通常、その期待にこたえるべく雇用維持を図っているものということができよう。その結果、定年退職以外の転退職(特に解雇)は、その労働者にとって、再就職等の面でも著しく不利益に作用することも少なくないのである。
 以上の実情をもふまえて整理解雇が有効になされるための要件についてみるに、
 (一) 企業が重大な経営危機に陥り、労働者を解雇するのでなければ、企業の維持、存立が困難となり、あるいは長期的に業績が悪化するなど近い将来企業も労働者も共倒れになることが予見される状態にあること、
 (二) 企業において経営改善の努力を尽し、また解雇以外の出向、配転、任意退職募集等の余剰労働力吸収の手段を尽したうえで行なうものであること、
 (三) 整理解雇の人選においてその基準の設定及び適用の合理性、公平さが保たれたものであること、
 (四) 右解雇の必要性、人選の基準等につき、労働者側の納得を得るための努力を会社が怠っていないこと、
 以上の要件が継続的法律関係である労使関係の信義則上要求されるものと解する。したがってこれらの要件をみたさずになされたものは、解雇権の濫用としてこれを無効と解すべきである。
〔解雇-整理解雇-整理解雇の必要性〕
〔解雇-整理解雇-整理解雇の回避努力義務〕
 以上考察の結果を総合すると、本件解雇は、前記整理解雇の有効要件であるところの(一)会社の経営危機、(二)会社の解雇回避の努力等の条件を充足したものとは云えずいまだその必要性、緊急性があったとは認め難いので、その余の(三)解雇基準の設定及び適用、(四)組合側との交渉等の要件につき判断するまでもない。