ID番号 | : | 03321 |
事件名 | : | 解雇無効確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 東大阪タクシー事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 無断欠勤、顧客に対する態度不良等を理由とする懲戒解雇が有効とされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 民法1条3項 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務懈怠・欠勤 |
裁判年月日 | : | 1979年11月22日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和53年 (ワ) 1946 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労経速報1036号15頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務懈怠・欠勤〕 ところで、道路運送法第一五条によれば、一般自動車運送事業者は、法定の除外事由がない限り、運送の引受を拒絶することができない旨規定されているところ、右認定の事実によると、被告会社の使用人である原告は、法定の除外事由がないのに途中で乗客の運送を拒絶するという右規定に違反する行為をなしたものということができる。そして、同法条に違反した場合、当該行為者のみならず、両罰規定により事業者も罰金を科せられる(同法第一三二条、第一三〇条第三号)ほか、同法第四三条により、事業の停止又は免許の取消しという行政処分も受けるおそれがあり、また、タクシーの乗車拒否などに対する世間の批判の強いことは当裁判所に顕著の事実であり、現にお客から原告の右行為を非難する電話が寄せられ、被告会社においてこれに対し相当な応対をせざるをえなかったことからすると、原告の右行為が被告会社の信用を傷つけるものであることは明らかである。 そうすると、原告の途中運送拒絶行為は、就業規則第九六条第一四号、第一六号に該当するものというべきである。 また、原告が当日の運転日報に不正確な記入をした行為が就業規則第九五条第二号に該当することは明らかであるが、右不正確記入行為が就業規則第九六条第二二号にいう「情状酌量余地なきもの」といえるかどうかについて検討するに、運転日報には、乗客の乗降地点、時刻、現収及び未収の料金などが記載され、乗務員のいわゆる歩合給算定の資料とされるとともに、区域外営業の有無の判定のために作成されるものであるから、その記入については正確性が要求され、被告会社においても、乗客が乗車したときにその地点と時刻、降車したときにその地点と料金を記入するように指導していたこと(人証略)、運転日報用紙の見易いところに「注意時間は正確に料金とコースは有の侭其の都度真実の記入をしなければならない」と記入されていること(人証略)、原告も通常は右の指導に従い、また、乗客が乗車したときに目的地(降車地)まで記入し途中で降車地点が変更になったときには、運転日報の経由欄に訂正して記入していたこと(原告本人尋問の結果)、本件不正確記入は前記途中運送拒絶行為のあった分についてのものであって、乗客からの苦情がなければ運転日報の記載状態、内容からは途中運送拒絶行為があったと判断することはできないと考えられるうえ、原告は、当日の被告会社からの無線呼出にも全く応ぜず(人証略)、今日まで途中運送拒絶行為のあったことを一貫して否認していることに照らすと、運転日報の訂正を失念したにすぎないとの原告の供述は到底信用することができない。 以上の事実を総合すると、原告は途中運送拒絶の事実を隠蔽するために運転日報の訂正をことさらしなかったものと推認することができ、その動機目的において悪質というほかない。 そうすると、原告の右行為は、就業規則第九六条第二二号、第九五条第二号に該当するものというべきである。 |