ID番号 | : | 03328 |
事件名 | : | 解雇無効確認請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 河内信用組合事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 不正貸付行為を想像させるような言動をした信用組合役席者に対する信用毀損等を理由とする懲戒解雇が有効とされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項9号 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 信用失墜 |
裁判年月日 | : | 1979年12月24日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和53年 (ワ) 2267 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労経速報1037号21頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-信用失墜〕 4 そうすると、原告の本件非行は、就業規則四五条八号、一〇号に該当するので、被告はこれに対し、懲戒処分をすることができるものというべきである。そして、被告は原告に対し、懲戒解雇をもって臨んだのであるが、被告の右解雇の適否、すなわち、右解雇が懲戒権を濫用して行われたものというべきかどうか(再抗弁)について検討する。 被告組合は、金融機関という信用を最も重んずべき企業であることからすると、そこに勤務すべき従業員としては、その意義を十分理解し、被告組合の信用を毀損し、その利益に反する行為をしてはならない義務を負う(就業規則四条一号)ものというべきところ、原告の前記就業規則四五条八号違反の行為(Aに対する「第二の弘容」に関する言動)は、何ら根拠がないのに被告組合の信用を毀損する言動に及んだという点において、悪質な従業員としての義務違反があるものというべきであり、加えて、前記説示のごとく、原告は、手形貸付金元帳を他に漏らす目的でそのコピーを作成し、さらに、何ら根拠がないのに被告組合の監督官庁に対し、仮名を使って被告組合に不正があるなどと電話した行為をも併せ考えると、原告は、将来においても被告組合の名誉及び信用を毀損するような行為を行う危険性は大きいものといわなければならない。 また、原告は、従来から上司の指示に容易に従わないところがあったことを十分に窺うことができる((人証略)及び弁論の全趣旨)ところ、本件非行は、単に理由書を提出するようにとの指示に従わず、規律を乱したばかりか、上司に対し暴行に及んだという点において、礼節を費んずべき金融機関の従業員、特に役席者として、許容し難い秩序違反行為であるというべきである。 さらに、被告組合は、原告の父との関係を重視し、原告に対し、その犯した非行を反省させることを主眼として努力したにもかかわらず、原告は、何ら反省の態度を示すことなく、かえって、被告組合理事長の発言をとらえ、熟慮することなく、感情のみを先行させ、かつ被告組合の従業員としてあるまじき態度をもって、結局のところ懲戒解雇処分を求めるかのごとき言動をとったことは、被告組合の従業員としての適格性を疑わせるに十分なものというべきである。 以上の諸点と原告本人尋問の結果に徴しても、原告が自己の非行に気付き、深く反省している状況は全く窺えないことを勘案すると、前記認定のごとく原告が被告組合において、預金獲得に優秀な成績を示したなどの故をもって表彰を受けたことがあったことを考慮しても、被告が本件非行に対し懲戒解雇をもって臨んだことは無理からぬところがあるというべき、懲戒権者たる被告の裁量権の行使に基づく処分が社会観念上著しく妥当を欠き、解雇権を濫用したものとまでいうことはできない。 他に原告の再抗弁を認めるに足る証拠はない。 |