ID番号 | : | 03329 |
事件名 | : | 解雇無効確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 日本鋼管ライトスチール事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 熊谷工場から東京事務所への配転命令拒否を理由とする解雇につき、右命令は労働契約の範囲内にあるとして解雇を有効とした事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 民法1条3項 |
体系項目 | : | 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令の根拠 解雇(民事) / 解雇事由 / 業務命令違反 |
裁判年月日 | : | 1979年12月27日 |
裁判所名 | : | 浦和地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和51年 (ワ) 102 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労経速報1039号16頁/労働判例333号23頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令の根拠〕 以上の諸事実からすれば、原、被告間の労働契約は、原告主張の如く勤務地、勤務内容をそれぞれ熊谷、事務職と限定する旨の特約のついたものとは到底いえず、被告主張の如く業務上の必要があれば、被告は、技能、健康等を考慮のうえ、原告を配置転換する権限を有する旨の労働条件が含まれているものと解される。 〔解雇-解雇事由-業務命令違反〕 そこで、被告に配転命令権が存しないことを前提に本件解雇の無効をいう原告の主張について判断すると、(二)においてすでに述べたとおり、被告は、業務上の必要性があるときは、技能、健康等を考慮のうえ原告に対し配転を命ずることができるものであるところ、(三)に認定した本件配転命令発令の事情からすれば、本件配転には業務上の合理的必要性があり、発令にあたっては原告の能力、健康その他の諸事情が総合的に考慮されていると認められるので、原告の右主張は採用できない。 (七) 思想信条を理由とする差別的取扱について 請求原因4(三)の事実はこれを認めるに足る証拠がない。従って、思想信条を理由とする差別的取扱であるから本件配転、本件解雇は無効であるとの原告の主張も採用できない。 (八) 権利濫用について 次に、本件配転、本件解雇が権利の濫用にあたり無効であるとの原告の主張について判断すると、本件配転の理由については、(三)に認定したとおりであって、充分な業務上の必要性があり、一方、本件配転による原告の生活関係への影響としては、(四)で認定したとおり、農家の長男である原告が出勤前後の時間を利用して母親と行っていた養蚕及び関係団体役員としての分担が行えなくなること、近所づきあいが困難になること、通勤に二時間一五分程度かかるようになることが認められる。しかし、被告においては昭和四五年三月から昭和五〇年にかけて農家の長男である従業員で熊谷から東京へ配転になったものが一九名おり、原告自身、採用面接の際、農業をやめて被告の仕事に専念できる旨述べていること、被告の東京事務所に国鉄高崎線篭原駅以遠から二時間前後の時間をかけて通勤している従業員が四一名もおり、その一人である立石英勝は通勤に支障を感じていないことも前認定のとおりであって、これらの事情を考慮すると、原告が本件配転によってその生活関係に対し受ける影響は、一般に労働者が使用者と労働契約を締結することによって当然うけることが予測される範囲、程度のものと認めるのが相当である。 また、本件配転命令後、本件解雇に至るまでの被告の原告に対する本件配転についての説明、説得の経緯は、(五)に述べたとおりであって、被告が、信義則に基づく説得を行わなかったということは到底できず、他に権利濫用に当ると認めるべき事由は見当らない。 従って、原告の右権利濫用の主張も採用できない。 |