全 情 報

ID番号 03358
事件名 地位保全仮処分申請事件
いわゆる事件名 後楽園スタジアム事件
争点
事案概要  後楽園スタジアムで野球場の業務に従事していた従業員が人工芝敷設工事に関連して不正な金員を受けとったとして懲戒解雇されたことにつきその効力を争った事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務上の不正行為
裁判年月日 1978年7月13日
裁判所名 東京地
裁判形式 決定
事件番号 昭和52年 (ヨ) 2366 
裁判結果 却下(確定)
出典 時報905号119頁/労経速報993号15頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務上の不正行為〕
 (一) 賞罰規定第九条第一〇号の「業務を利用して」とは当該従業員がかつて又は現に担当し、若しくは将来担当するであろう職務を利用した場合をいうものと解するのが相当であるところ、前記事実によれば、申請人は人工芝敷設工事発注先のA会社から人工芝敷設に関し一四〇〇万円を受領しているが、同人は昭和四七年九月から昭和五一年三月まで沖縄海洋博覧会のため出向しており、人工芝敷設工事計画が本格化し出した昭和五〇年四月頃から右工事発注時である同年一一月頃までの間野球場人工芝敷設工事に関し職務上は何ら関与する立場になかったのであるから、申請人がその業務を利用して金品を収受したものとは認めることができず、申請人の右所為は賞罰規定第九条第一〇号所定の事由に該当しないというべきである。
 (二) しかし、前記のとおり、申請人の受領した金員は、A会社が技術又は開発面で申請人から有益な助言を得たためではなく、本件工事につきA会社が受注先として決定されること自体に対し支払われたものということができるから、仮にそれがA会社の本件請負契約による利益の中から支払われたものとしても、その請負代金額が右金額分減額されえたことを示すものであり、被申請人は、申請人の行為により、その受領額と必ずしも同額ではないとしても、疎明資料により認められる交渉の経緯からすれば、なお相当額の減額を期待しえたものであって、申請人もこれを認識していたものと推認できる。従って、申請人は故意に重大な損害を被申請人に与えたものというべく、その行為は、賞罰規定第九条第一五号に該当する。
 そして本件事案に照すとその情状は決して軽くはないから、本件懲戒処分は相当であるといわなければならない。