全 情 報

ID番号 03363
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 航空自衛隊第五航空団事件
争点
事案概要  要撃戦闘訓練中の自衛隊機の墜落事故につき国の安全配慮義務違反が問われた事例。
参照法条 民法415条
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任
裁判年月日 1978年7月24日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和50年 (ワ) 10674 
裁判結果 認容(控訴)
出典 訟務月報24巻9号1744頁
審級関係 控訴審/東京高/   .  ./昭和53年(ネ)2034号
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務〕
 国と国家公務員(以下「公務員」という)との間において、国は公務員に対し、国が公務の遂行のために設置すべき場所、施設もしくは器具等の設置管理にあたつて、公務員の生命および健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務(安全配慮義務)を負つており(最高裁判所昭和五〇年二月五日判決、民集二九巻二号一四三頁)、本件のようにジエツト戦闘機に塔乗し、要撃戦闘訓練に従事する自衛官に対しては、機体部品等の十分な整備を実施し、事故発生を防止して飛行の安全を保持すべき義務を負うと解すべきである。
 そして航空機墜落事故においては、被害者側においてその個別、具体的な事故原因を確知することは極めて困難であり、しかも〈証拠略〉によれば、本件の場合、被告は本件事故原因につき調査委員会を編成し、機体を回収、分解して調査しその結果を報告書にまとめていることが認められるにも拘わらず右報告書を本法廷に提出していないのであつて、かかる場合においては、三、3判示のように、事故機墜落の原因が機体または燃料系統に不具合を生じ、エンジンへの燃料供給に異常を生じたことにあると推認される以上、立証の公平の見地から、被告において、本件事故につき十分な整備、点検をおこなつたにもかかわらず右事故の発生が予見し得なかつたことの立証が尽されない限り、事故機の整備点検を十分に実施すべき安全配慮義務の違反があつたものと推定するのを相当とする。