全 情 報

ID番号 03384
事件名 未払賃金並びに附加金請求併合事件
いわゆる事件名 静岡県職員組合事件
争点
事案概要  県職員組合が賃金確定についての要求を優利に進めるための戦術として県の本庁および出先機関の全職場においてあらかじめ指定した一定数の組合員をして一斉に年休をとらせる、いわゆる一斉休暇闘争を指示したケースで、それが同盟罷業であるとして賃金カットされたことにつき右カット分の賃金を請求した事例。
参照法条 労働基準法39条3項
体系項目 年休(民事) / 年休の自由利用(利用目的) / 一斉休暇闘争・スト参加
裁判年月日 1977年2月18日
裁判所名 静岡地
裁判形式 判決
事件番号 昭和48年 (ワ) 392 
昭和50年 (ワ) 409 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 労働民例集28巻1・2合併号16頁/時報863号114頁/労経速報965号10頁
審級関係 控訴審/01418/東京高/昭53.12.27/昭和52年(ネ)749号
評釈論文 盛誠吾・労働判例289号12頁/平岩新吾・公企労研究31号136頁/堀家嘉郎・教育委員会月報323号36頁/野平匡邦・地方公務員月報167号46頁
判決理由 〔年休-年休の自由利用(利用目的)-一斉休暇闘争〕
 一斉休暇闘争の場合は、その実質が年休に名を藉りた同盟罷業にほかならないので、本来の年休権の行使ではなく、賃金請求権が発生しないことは、三・二判決が説くとおりである。ただ、三・二判決は、一斉休暇闘争の定義として、「労働者が、その所属の事業場において、その業務の正常な運営の阻害を目的として、全員一斉に休暇届を提出して、職場を放棄・離脱すること」と説いているが、右の「全員一斉に」とは、当該事業場所属の労働者の全員が一斉にという意味ではなく、休暇闘争参加者が全員一斉にという意味であり、一定割合の組合員が休暇届を出す場合(何割闘争と呼ばれる)も、「一斉に」それが提出される限り、一斉休暇闘争に含まれると、三・二判決は解しているものと考えられる。けだし、文字どおり、当該事業場所属労働者全員が一斉に休暇を請求する場合のみが、一斉休暇闘争であるとするならば、当該事業場所属労働者の一人でも休暇を請求しなければ、一斉休暇闘争ではなくなるという、三・二判決が予想していない結論になつてしまうからである。要するに、組合側が、自己の主張を貫徹するため、争議行為の一手段として、予め指定しておいた一定の組合員をして、計画的・組織的に全員一斉に年休を請求させて一方的に勤務関係から離脱させ、その結果、当該組合員所属の事業場における業務の正常な運営を妨げることを目的とする行為が、三・二判決にいう一斉休暇闘争であり、かかる行為は、年休に名を藉りた同盟罷業にほかならず、年休権行使以前の問題であるから、使用者の時季変更権行使の有無に拘わらず、一斉休暇闘争の名の下に同盟罷業に入つた労働者の全部について、賃金請求権が発生しないのである。