全 情 報

ID番号 03386
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 ソニーマグネプロダクツ事件
争点
事案概要  磁気テープ製造作業に従事していた労働者が人体に有害な有機溶剤を暴露吸引して肝障害を起し、これによって体が衰弱して治療中にクリプトコッカス症にかかって死亡したとして使用者に雇傭契約上の安全配慮義務に違反するとして損害賠償を請求した事例。
参照法条 労働基準法2章
民法415条
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任
裁判年月日 1977年3月14日
裁判所名 仙台地
裁判形式 判決
事件番号 昭和49年 (ワ) 801 
裁判結果 一部認容・棄却(控訴)
出典 下級民集28巻1~4合併号197頁/時報847号3頁/タイムズ346号124頁
審級関係 控訴審/仙台高/昭62.12.18/昭和52年(ネ)102号
評釈論文 東孝行・判例タイムズ351号104頁/東孝行・判例タイムズ367号267頁
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務〕
 雇用契約は、労務の提供と報酬の支払とをその基本的内容とする双務有償契約であるが、通常の場合、労働者は、使用者の指定した労務給付場所に配置され、使用者から提供された設備、機械、器具等を用いて労務の給付を行なうものであるから、雇用契約に含まれる使用者の義務は、単に報酬の支払に尽きるものではなく、右提供にかかる諸施設から生ずる危険が労働者に及ばないよう労働者の安全を保護する義務も含まれているものというべきである。これを本件についてみれば、前記のように、本件作業場においては、人体に有害な有機溶剤が多量に使用されていたのであるから、被告としては、労働者に対し、有機溶剤の取扱いに対する注意を日頃から徹底させるような安全衛生教育をなし、また、有機溶剤の気中濃度を適確に測定し、作業場の安全な環境を保持すべきであり、さらに、特殊健康診断を所定のとおり実施し、労働者の身体の異常を適確に把握すべきであり、少なくともドライヤー払拭作業の際にはホースマスク等の保護具を使用させ、労働者の生命、身体の安全を図るべきであつたのであり、これらは本件作業場のような有機溶剤を用いる作業場において労働者を就労させる場合に、労働者の安全を保護するために使用者に課せられた義務であるというべきである。しかるに、被告においては、これらの義務を十分に尽すことなく懈怠していたものであるから、Aに対する雇用契約上の義務違反は明らかであるというべきである。