全 情 報

ID番号 03398
事件名 配置転換処分効力停止等仮処分申請事件
いわゆる事件名 高木電気事件
争点
事案概要  会社技術部電子機器課に勤務してコンピューター機器の保守の業務に従事してきた者が技術部技術サービス第一課勤務への配転を命じられて拒否したことを理由として休職処分とされたことにつきその効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法2章
労働基準法3章
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令の根拠
賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 就労拒否(業務命令拒否)と賃金請求権
裁判年月日 1977年5月27日
裁判所名 大阪地
裁判形式 決定
事件番号 昭和51年 (ヨ) 3122 
裁判結果 却下
出典 労経速報965号16頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令の根拠〕
 会社が電子機器課を廃止して同課に所属していた従業員を他の部署へ配転し、もしくは出向させることとなったのは業務上の必要に基づくものであったことが明らかであり、それが不当であることを窺わせるような事情は全く見当らない。
 (中略)
 電子機器課の廃止に伴い、従前申請人の担当していたA会社の公害テレメータの保守の仕事がそのまま新会社に移管されたものの、申請人には丸ビルでの右各機器の保守の仕事を継続して行わせるため、これを第一技術サービス課へ配転することとなったものであるが、ただ、電話交換機の保守の業務については、申請人に知識経験が乏しいため、二、三カ月間その点の知識経験の深い道和工事課員を丸ビルに派遣して申請人に付き切りで教育するよう配慮することが予定されていた。
 しかして、右認定のような事情からするならば、会社が電子機器課の廃止に伴って申請人を第一技術サービス課に配転したことをもって特に合理性を欠くものと認めることはできず、また、職種に関する労働契約の内容に反するものとみることもできないといわざるをえない。
〔賃金-賃金請求権の発生-就労拒否(業務命令拒否)と賃金請求権〕
 一般に雇用契約は双務契約であり、労働者の労務の給付と使用者の賃金支払とは対価的な牽連関係に立つものであるから、労働者の責に帰すべき事由によって労務の給付がなされないときは、労働者はその対価である賃金を請求することができないというべきところ、本件配転命令が有効になされたものであることは前説示のとおりであり、かつこれが無効であると信ずべき相当な事由が存在したと認められないのにかかわらず、申請人が会社側の説得、命令を無視して、既に存在しない電子機器課の仕事でなければしないとか、まず本件配転問題について組合と協議せよとかいって労務の提供を拒否し続けていることは右認定のとおりであるから、申請人としては、自己の責に帰すべき事由によって労務を給付しないものというべきであり、したがって、本件配転命令に従って労務の提供をしないかぎり、会社に対し賃金を請求することはできないといわなければならず、本件休職処分が前記のとおり無効であるからといって、その理を異にするものではない。