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ID番号 03409
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 高知営林署事件
争点
事案概要  林野庁においてチェンソー、ブッシュクリーナーの使用によって振動障害(白ろう病)を生じた者が国の安全配慮義務違反を理由として損害賠償を請求した事例。
参照法条 民法415条
民法1条2項
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任
裁判年月日 1977年7月28日
裁判所名 高知地
裁判形式 判決
事件番号 昭和49年 (ワ) 10 
裁判結果 一部認容・棄却(控訴)
出典 時報861号24頁/タイムズ351号215頁/訟務月報23巻8号1349頁
審級関係 控訴審/03132/高松高/昭59. 9.19/昭和52年(ネ)176号
評釈論文 佐藤進・労働法の判例〔ジュリスト増刊〕117頁/瀬川信久・判例評論231号24頁/西村健一郎・昭和52年度重要判例解説〔ジュリスト666号〕212頁/藤本正・労働判例282号21頁/國井和郎・判例タイムズ357号14頁/國井和郎・判例タイムズ360号10頁/國井和郎・判例タイムズ364号58頁/國井和郎・判例タイムズ367号271頁
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務〕
 林野庁は、その事業遂行のため、作業員に対し、機械を提供してこれを操作させその労務の提供を受けている以上、その機械はこれを操作することにより操作する作業員の身体に障害を与えない性能を有するものであることを要するのみならず、当該機械を操作させるにつき、これを操作する作業員の生命、身体、健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務を負つていると解される。
 2 林野庁の具体的な債務不履行
 (一) 雇用者としての林野庁は、全く新しい機械を導入するのであるから、機械の人体に与える影響を当然事前に調査研究し、右機械の使用あるいは使用方法によつて、作業員に障害がないことを確かめた上で、作業者に対し機械を使用させるべきであつた。
 ところが林野庁は右義務を怠り、国有林における昭和三二年のチエンソーの本格的導入(ブツシユクリーナーは昭和三六年)以前にすでにチエンソー、ブツシユクリーナーと同様の振動器具である鋲打機、さく岩機等の使用によつて蒼白現象等の振動障害が起ることが、わが国の学者の研究論文等で明らかとなつており、鋲打機、さく岩機等の使用による振動障害は労働基準法により、職業病に指定されていたにもかかわらず、単に振動の強度が異ること、チエンソー、ブツシユクリーナーによる振動障害の実例がないことを理由に、チエンソー、ブツシユクリーナーの導入に際して振動障害について事前に調査、研究をせず、チエンソー、ブツシユクリーナーを導入し、原告らの経歴目録記載どおり、原告らにチエンソー、ブツシユクリーナーを使用させ、振動障害を惹起させたものであるから、安全配慮義務の不履行として被告は責任を負うべきである。