全 情 報

ID番号 03412
事件名 期末手当等請求控訴事件
いわゆる事件名 北海道硫黄事件
争点
事案概要  鉱山閉山による全員解雇に際し、労使協定により退職金の支給額、源資の上伸を停止条件として移転費用、期末手当の支払い等が合意された場合につき、右条件が成就されたとはいえず、すでに退職金を受けた者については、右協定の効力は及ばないとされた事例。
参照法条 民法623条
労働組合法14条
体系項目 賃金(民事) / 退職金 / 退職金請求権および支給規程の解釈・計算
裁判年月日 1977年9月22日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和49年 (ネ) 2773 
裁判結果 取消(上告)
出典 時報869号100頁
審級関係 一審/長野地/昭49.11.11/昭和48年(ワ)91号
評釈論文
判決理由 〔賃金-退職金-退職金請求権および支給規程の解釈・計算〕
 右事実によって考えると、会社側が閉山解雇に伴い無条件に支払を約した給付金の総額は金六億二〇〇〇万円にほかならず、これを組合側の希望により全額会社都合退職金名義で支払った上、なお政策助成金が内示額を上回り、あるいは特別委員会にはかりつつすすめられる資金作りのための資産換価が好都合に進展して、金六億二〇〇〇万円を超える資金が退職給付金の支払に充てられるべき源資として、その最終支払時である昭和四七年三月末までに調達できた場合には、これを前記項目の順序で計算して追加支払する旨を合意したことになるから、本訴請求金に該る追加給付金の支払約束は、右のようにして支払源資が上伸したことを停止条件とするものであったと解すべきであり、そして右条件成就の事実はこれを認めることができないのである。
 (中略)
 また被控訴人らは、本訴請求債権はいずれも閉山協定前から成立している既定の債権であるというが、本件のように、会社が経営に行き詰まって閉山に追い込まれ全員を解雇せざるをえず、まして退職給付金支払源資の一部を他からの助成金に仰がなければならないような事態のもとでは、既存の協約や規定上債権が発生しているか否かにはかかわりなく、実情に即応した団体交渉の結果あらためて退職給付金等に関する協定を結んで実のある解決の途を選ぶ例が世上少くないのであり、前記認定の事実関係からすれば、被控訴人らも、それと同じ前提に立った上で本件閉山協定に対し組合員大会ではかなり多くの者が反対の態度を採ったが、結局その承認議決が成立した後は、右協定を前提とした退職給付金の支払を受けている(この点は被控訴人らの自認するところである。)ことによって、個別的にも協定に対し黙示の承認をしたものというべきであって、協定前から存在する債権であるとして本訴請求をなしうべき限りでない。