全 情 報

ID番号 03429
事件名 損害賠償等請求控訴、同附帯控訴事件
いわゆる事件名 灘郵便局員事件
争点
事案概要  郵政職員が勤務時間中に「さあ!団結で大巾賃上げをかちとろう」と記載した、リボン及び「全逓、灘郵便局支部」と記載した腕章を着用し、これの取外しの命令に従わなかったことを理由として訓告処分に付されその効力を争った事例。
参照法条 国家公務員法96条1項
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 違法争議行為・組合活動
裁判年月日 1976年1月30日
裁判所名 大阪高
裁判形式 判決
事件番号 昭和42年 (ネ) 650 
昭和43年 (ネ) 1673 
裁判結果 (確定)
出典 労働民例集27巻1号18頁/時報804号3頁/訟務月報22巻3号625頁
審級関係 一審/04331/神戸地/昭42. 4. 6/昭和39年(ワ)379号
評釈論文 橋詰洋三・労働法の判例〔ジュリスト増刊〕191頁/近藤昭雄・労働判例247号11頁/松浦繁・公企労研究26号122頁/松浦繁・法律のひろば29巻5号52頁/水上益雄・公務員関係判例研究11号14頁/西川美数・判例評論210号41頁/渡辺章・労働判例百選<第四版>〔別冊ジュリスト72号〕196頁/林昭・地方公務員月報156号58頁
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-違法争議行為・組合活動〕
 一審原告らの本件リボン等の着用は各自の着衣の胸部分(リボン)または腕部分(腕章)にこれらを付着させるものであつて、その着用は「服装」の概念に含まれると解される。しかして、右リボン等の着用は、その表示において、または着用自体において、特に他人に嫌悪または卑わいの情を催させるとは言い難く、また、広く一般に、非道徳性をもつて非難問責すべき点があるとは思われないことは一審原告ら所論のとおりである。この点に関して、一部特定人の労働組合または労働運動に対する主観的な好悪の情をしんしやくすることは、いずれに左袒するにしても、相当でない。しかし、前記のような郵政省職員の使命および義務に照らし、職場内の規律が保たれ、もつて、公正な態度で国民から託された職務に専念するにふさわしい服装であるか否かの観点から判断するならば、本件リボン等の着用は、正常な業務の運営に無関係、不必要なものであり、また、規則二七条に違反する勤務時間内組合活動の具体的な実行々為としてなされた服装にほかならず、結果として勤務時間内の職場規律を乱すものというほかないものである。したがつて、右リボン等の着用は正しくない服装であり、規則二五条一項に違反するものといわねばならない。
 (中略)
 一審原告らの本件リボン等の着用が規則二七条および二五条一項に違反すること上記説示のとおりであるから、これが取外しを命じた局長の職務命令はもとより適法であり、一審原告らはこれに忠実に従う義務がある。
 そうすると、一審原告らがその上司である局長の本件リボン等取外し命令に従わなかつたことは、爾余の判断をなすまでもなく、規則五条二項に違反するものである。
 以上のとおりであるから、灘郵便局長が一審原告らに対してした本件訓告処分の処分事由はいずれもこれを肯認することができる。