全 情 報

ID番号 03430
事件名 配転無効確認請求事件
いわゆる事件名 徳山曹達事件
争点
事案概要  地元の工業高校を卒業して入社後一七年してから東京支店の社長室特許課へ配転を命じられた社員が右配転命令の効力を争った事例。
参照法条 労働基準法2章
民法1条2項
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令権の限界
裁判年月日 1976年2月9日
裁判所名 山口地
裁判形式 判決
事件番号 昭和46年 (ワ) 62 
裁判結果 認容(控訴)
出典 時報812号113頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令権の限界〕
 一般に、労働契約において、給付の目的たる労務は、労働者の人格と切り離すことのできないものであり、継続的な債権債務の関係であることに鑑み、また、勤務場所は、労働者の生活の本拠と密接不可分の関係にあり、重要な労働条件でもあるから、使用者は、たとえ、右のような権限に基づいて、業務上の必要により、労働者に転勤を命ずる場合であつても、常に無制約に許されるものと解すべきではない。殊に、労働者が長年同一場所に勤務して相当の成績をあげているとき、その勤務場所を遠隔地に変更する場合には、信義誠実の原則に照らし、使用者としては、客観的に余人をもつて代え難い場合でない限り、当該労働者の同意を得る必要があると解するのを相当とする。
 (中略)
 原告は、昭和二九年三月入社以来、本件配転に至るまで、一貫して徳山市の被告会社本社に勤務し、研究部研究員、薬品課係員、検査課係員としての業務経験を積み、特に資料の調査、整理等にすぐれた能力を認められていること、そして、本件配転問題以外に、被告会社の業務の運営上、特に原告を他の職場に移さなければならない必要は認められないこと、しかも、本件配転による原告の担当業務が必ずしも同人でなければならないほど特種なものと思われないこと、本件配転による勤務場所が東京のような遠隔地であること、そして、本件配転によれば、原告としては、妻に養母の世話をさせるため、夫婦が別居を余儀なくされ、精神上ならびに経済上顕著な不利益を蒙ることが認められる。このような場合には、さきに説示したところにより、被告は、本件配転について原告の同意を得なければならない場合に該当するものと解する。