ID番号 | : | 03436 |
事件名 | : | 懲戒処分無効確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 住友化学工業事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 労働者が、労働者訪中学習参観団に参加するため、事前に欠勤届を提出したのみで、使用者の承認を得ないまま一一日間欠勤し、就業規則にいう「不都合な理由で就業しないとき」に該当するとして一〇日間の出勤停止処分に付されたケースでその効力を争った事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項9号 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務懈怠・欠勤 |
裁判年月日 | : | 1976年3月15日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和48年 (ワ) 3426 |
裁判結果 | : | 棄却(控訴) |
出典 | : | 労働民例集27巻2号101頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 西村健一郎・労働判例253号11頁 |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務懈怠・欠勤〕 従業員の欠勤が使用者側における労働力配置計画に支障を与え、その労働力管理、生産秩序ないし企業内秩序の維持に悪影響を及ぼすものであり、ことに事前の届出なくして欠勤する場合に甚しいといえるけれども、欠勤が正当な理由に基づく場合とかやむを得ない事情による場合においては、使用者側においてもこれをある程度は受忍せざるをえない。しかしながら、従業員の恣意的な欠勤についてまでも、使用者側に受忍すべきであるということはできず、使用者としては、単にその不就労による賃金カツトの他に、合理的な範囲内でこれを防止すべき措置を採ることは許されると解する。このことは、勤務に不熱心な者に対して制裁を加え、その反省を求め、場合によつては解雇等によつて企業外に排除することの許されるのと同様である。本件においても、就業規則八八条九号に「出勤が常でなくまたは遅参、早退が多い等勤務に不熱心なとき」は過怠金または出勤停止に処する旨定められていることは、当事者間に争ないところであり、原告の見解によつても、右のような場合における懲戒、あるいは欠勤が著しく恣意的な場合において使用者が制裁を課すことをも否定するものでないことは、原告の主張からもうかがえるところである。 右のような点からして、就業規則三二条四号で「不都合な理由」による欠勤を、同条三号の「やむをえない事故」による欠勤と区別して、無届欠勤と同様に取扱う旨定め、同規則八八条二号でこれに対し懲戒に処する旨定めているこの規定そのものは、必ずしも不合理なものとはいえない。 (中略) 原告は、直属の上司からの説得にかかわらず、被告からの承認を得ないままに長期間の旅行に出て就業せず、原告の不就業によつて被告会社の業務に支障が生じたものであり、かつ、被告が本件欠勤について就業規則上の無届欠勤として取扱つたことも止むをえなかつたこと等の事実に、成立に争いない甲第三号証、原告本人の供述から認められるように原告は前年の昭和四六年六月頃に約二週間旅行をなし、その期間中の一部は有給休暇でまかなえたものの約五日間は欠勤となつたような事実があること、更に、成立に争ない乙第一号証の二、証人Aの証言により認められるように、本件欠勤について原告所属の前記労働組合と被告との労働協約に基づく懲戒委員会が開かれたが、同委員会に出席した組合側委員においても、本件欠勤につき原告を一〇日間の出勤停止に処することについて特別異論のなかつたことが認められること等を勘案するときは、被告が原告に対し本件欠勤につき一〇日間の出勤停止の懲戒処分をなしたことは、不相当なものであつたと言うことはできない。 |