全 情 報

ID番号 03442
事件名 地位確認等請求事件
いわゆる事件名 学校法人松山学院事件
争点
事案概要  高校の体育の講師が、授業中不真面な生徒を殴打し一〇日間の打撲傷を負わせたことを理由に懲戒解雇された事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の濫用
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 暴力・暴行・暴言
裁判年月日 1976年3月29日
裁判所名 松山地
裁判形式 判決
事件番号 昭和48年 (ワ) 363 
裁判結果 認容(控訴)
出典 時報817号118頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒権の濫用〕
 右の懲戒処分中懲戒解雇は、被用者をその非違行為を理由として職場外に排除する最も重い制裁であり、特に原告のような教職の者にとっては、これによって、事実上、教師としての再就職の道を断たれかねない結果を招来するものであることに鑑みると、原告の本件非違行為に対して、被告が懲戒権を発動するにあたっても、その処分の選択につき裁量の幅があるとはいえ、懲戒解雇は、それ以下の軽い処分を付する余地を認めがたい場合に限って許されるものと解するのが相当である。
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-暴力・暴行・暴言〕
 原告の右行為は、私怨にもとづく私行上の非行等とは全く性質を異にし、あくまで教育遂行の過程において、集団行動訓練中に一生徒の再三の不真面目な態度を原告が是正させようとしたのに容易に果せないあせりが立腹を誘い、短慮にも殴打してしまったものであり、その態様をみても、きき手ではない左手を用いて殴っている点で腹立ちまぎれとは言え、幾分かの謙抑がみられること・事後処置も比較的適確にとっていること・傷害の程度において結果的に鼻部のふくらみが大きく治癒に約一〇日を要したが、何らの後遺症も残らなかったこと・原告は右行為の後、Aやその両親に謝罪し反省のみられること、以上の事情が認められるのであって、これらの点からみると、本件非違行為は、情状酌量すべき面が少くないものと認められ、彼我総合すると、被告が原告を他のより軽い種類の懲戒処分に付するは格別、最も重い懲戒解雇に付して、反省や再起の機会を奪い去り、かつ将来においても事実上原告から教師としての最就職の道さえ閉す結果をも忍受させるのは苛酷に過ぎる処分であり、不当であると認めるのが相当である。