ID番号 | : | 03445 |
事件名 | : | 懲戒免職処分取消請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 郵政省職員事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 不許可集会の指導等を理由とする全逓信労働組合地区本部役員に対する懲戒免職処分が懲戒権の濫用にあたるとされた事例。 就業規則の定める年休取得の手続を守らないことを理由にその請求を拒むことはできず、多数の滞留郵便物があることを理由とする時季変更権の行使は権利濫用であり認められないとされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法39条4項(旧3項) 国家公務員法82条 |
体系項目 | : | 年休(民事) / 時季指定権 / 指定の方法 年休(民事) / 時季変更権 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 暴力・暴行・暴言 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 違法争議行為・組合活動 |
裁判年月日 | : | 1976年4月30日 |
裁判所名 | : | 名古屋地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和47年 (行ウ) 37 |
裁判結果 | : | (控訴) |
出典 | : | 時報831号99頁/タイムズ346号290頁/訟務月報22巻6号1587頁 |
審級関係 | : | 控訴審/名古屋高/昭52. 6.29/昭和51年(行コ)7号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔年休-時季指定権-指定の方法〕 当日の原告の年休請求は翌一一月三〇日の分についてであり、三〇日の原告の勤務は夜勤で速達の配達と郵便物の取り集めであつたのであるから、二九日当日に多数の滞留郵便物があること自体は原告の右勤務との関係で集配課の業務の正常な運営に直接影響を及ぼすことはありえない。また、原告に年休を付与すれば、日勤勤務の者から一名夜勤にまわすことになり滞留郵便物の処理に支障を及ぼすといつても、A集配課長は、年休請求にかかる三〇日の原告の勤務の種類すら調査せず、まして補充要員によつて補充可能か否かの調査もしていないのである。以上の事実からすれば、その余の点を考慮するまでもなく、A集配課長の時季変更権の行使は権利の濫用として許されないのは明らかであるというべきである。 〔年休-時季変更権〕 前記のとおり、年休の自由付与の場合の就業規則上の請求手続を履践しない請求に対しても、管理者はこれを拒否できず、また、名古屋南郵便局では所属長ではなく年休付与(時季変更権行使)権限のない班長を通して年休請求させる取扱いをしており、このこと自体は就業規則の所属長に提出すべき旨の規定には反するが班長が班の業務の状況を把握しやすい立場にあることから一応合理性を有するとはいえ、右規則にのつとり直接所属長である課長に請求してきたのに対し、その受理を拒むことまで正当ならしめるものでないことも明らかである。しかも、前記三(五)で認定の事実によれば、班長を通させる取扱いは形式化しており、課長と班長が同一の部屋にいることをも考え併せると右取扱い自体の合理性を肯定することすら困難であるというのほかはない。 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-暴力・暴行・暴言〕 五 (本件懲戒免職処分の違法性) 原告は、昭和四七年二月五日の事件につき、原告が南警察署に告訴され、本件懲戒免職処分当時、原告の起訴、不起訴は判明していなかつたのであるから、国家公務員法八五条の解釈として、このような場合も、被告において人事院の承認を得るのでなければ原告に対する懲戒手続を進めることはできない旨主張するけれども、本件懲戒免職処分は右二月五日の件のみを懲戒事由とするものではないうえ、国家公務員法八五条は、懲戒の対象となるべき事件が起訴され刑事裁判所に係属する間において懲戒処分手続を進めるについての手続上の要件を規定するもので、未だ起訴されていない事件についてまで右規定を準用ないし類推することは適切でないから、原告の右主張は採用の限りでなく、右二月五日の事件を本件懲戒免職処分の事由の一として判断の資料とすること自体当然許されるものといえる。 (一) 前記四において説示のとおり、原告には、昭和四七年二月五日の公用手帳奪取、局内を混乱に陥れた行為、暴行、職場離脱の各行為、昭和四六年一〇月二九日の職務執行妨害、暴力的行為、暴言、中庭における歌声集会中の同年一一月四日、同月九日、同年一二月六日、同月九日の各暴言及び右一一月四日の暴力的行為、同年一一月一〇日の理由なき抗議行為、鉢巻、腕章着用に関する同年一一月八日、同月二〇日、同年一二月九日の各暴言、年休請求に関する同年一一月五日の職務執行妨害、同年一一月二〇日の暴言、同月二七日の業務命令不服従、同年一二月三日の暴言、暴力的行為、抗議集会指導等の行為、同月一三日の職務執行妨害、暴力的行為の各懲戒事由が存在する。 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-違法争議行為・組合活動〕 以上の諸点を斟酌すれば、原告がしかるべき懲戒を受けなければならないことは当然であるが労働者にとつて極刑にも値する懲戒免職処分が原告の行為に対する処分としては著しく重きにすぎるというべきである。したがつて、本件懲戒免職処分は懲戒権を濫用するものとして違法であることが明白であるから取消を免れない。 |