全 情 報

ID番号 03457
事件名 未払賃金請求控訴事件
いわゆる事件名 市川造船所事件
争点
事案概要  出勤日数に応じて夏期一時金の金額が定まる旨の労働協約に関連して、時限ストライキの参加日数が右出勤日数に算入されるか否かが争われた事例。
参照法条 労働基準法11条
労働組合法7条
体系項目 賃金(民事) / 賞与・ボーナス・一時金 / 賞与請求権
裁判年月日 1976年10月27日
裁判所名 名古屋高
裁判形式 判決
事件番号 昭和48年 (ネ) 289 
裁判結果 棄却
出典 タイムズ348号235頁
審級関係 一審/津地/   .  ./不明
評釈論文
判決理由 〔賃金-賞与・ボーナス・一時金-賞与請求権〕
 本件一時金も賃金であり(前記給与規定第二条は、給与を賃金、賞与、退職金に分けているが、本件一時金が賃金でないとはいえず、前段認定の如き経緯をもつて、団体交渉の結果、使用者たる被控訴人が支払義務を負う以上、賃金であることは明らかである。)、その性質、すなわち、生活補助的ないし労働力の対価としての性質をいかに帯有するかは、右認定事実からいちがいに決定し得ないというのほかなく、控訴人主張のように、当然そのすべてが生活補助的なものとすべき合理的根拠は見出しがたいし、さればといつて、すべて具体的労働力の対価といい切るわけにもゆかない。一般企業において、支給される一時金の性質を区別して支給することのない実情にあつては、一時金の性質を明確に分析把握すること自体困難であるが、普通一般には、(一)夏期、年末時における特別の出費や生活費の不足に対する生活補助的性質、(二)企業の業績に応じた報酬ないし利潤の分配的性質、(三)当該対象期間内の労働力の対価たる賃金の後払としての性質を合わせ有しているのが実情と見られることは、当裁判所に顕著な事実というべく、本件一時金についても、これらの性質を合わせ有するものと見るのが相当であり、ただ、かくいえばとて、その割合を明確にするのは困難であつて、むしろ不可分不明確なものであるというのが実体である。
 (中略)
 本件一時金の性質が如何ようにでもあれ、協約の効力として、被控訴人は、時限ストによる不就労相当分を削減し得るものといわなければならない。