全 情 報

ID番号 03460
事件名 地位保全仮処分申請事件
いわゆる事件名 国労東京地本上野支部下十条電車区分会事件
争点
事案概要  国労のストライキに際して、駅ホームで到着した電車の運転室窓ガラスを手拳で叩くなどして電車の出発を一分三〇秒程延発させたことおよび運転士詰所に立入りスト不参加の運転士に対してスト参加を迫ったことを理由とする分会執行委員に対する懲戒免職処分の効力が争われた事例。
参照法条 日本国有鉄道法31条1項
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の濫用
裁判年月日 1976年12月17日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和46年 (ヨ) 2388 
裁判結果 認容(控訴)
出典 時報839号116頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒権の濫用〕
 債権者の前示所為に対し、債務者総裁は国鉄法三一条一項により免職、停職、減給又は戒告の懲戒処分をなしうるところ、この所為に対し右のうちどの処分を選択すべきかについては具体的基準を定めた法律や業務上の規程は存在せず、債務者総裁の裁量に委ねられ、そしてその裁量に当っては一般に、当該所為の外部に表われた態様のほかその所為の原因、動機、状況、結果等はもちろん、当該職員のその前後の態度、被処分歴、社会的環境、選択する処分が他の職員や社会に与える影響等幅広い範囲の事情を総合考慮しうるものと解されるのであるが、なおその裁量が、当該所為との対比において甚だしく均衡を失するなど社会通念に照らして合理性を欠くものである場合には、その裁量の範囲を超えるものとしてその効力を否定すべきであり、しかも右処分のうち免職処分は、職員の地位を失わせるという他の処分とは特段に重大な結果をもたらすものであるから、その選択に当っては他の処分を選択する場合と比較して特に慎重な配慮を要するものといわなければならない。
 (中略)
 右(一)、(二)の事情を綜合すると、債権者の所為は、その外形、原因、動機、状況、結果等行為の要素においてあるいは違法性の程度において、その所為の故に債権者を終局的に職場から排除するのでなければ債務者の企業秩序維持確保のうえで重大な支障があるというほどのものとはとうてい認めることができないし、また右(三)においてみたところによれば、本件免職処分は他のストライキ処分や本件ストにおける他の処分事例との対比においても酷に失するものといわざるをえない。従って、右(四)に判断した事情を考慮に入れ、なお債務者総裁がその他諸般の事情を考慮しうるものであることを念頭においても、なお本件免職処分は、本件所為との対比において甚だしく均衡を失し、合理性を欠くものというべく、裁量の範囲を超えるものであって、懲戒権の濫用としてその効力を否定すべきものといわなければならない。