ID番号 | : | 03462 |
事件名 | : | 解雇無効確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 日赤病院事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 日赤病院の臨床検査部長が開業医から委頼された検査料金を病院に納入せず課員の共益費に費消したことを理由として懲戒解雇されたことにつきその効力を争った事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項9号 民法1条3項 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務上の不正行為 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の濫用 |
裁判年月日 | : | 1975年1月13日 |
裁判所名 | : | 松江地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和48年 (ワ) 59 |
裁判結果 | : | 認容(控訴) |
出典 | : | 時報788号108頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務上の不正行為〕 原告はA日赤復帰直後に自己の指揮監督下にある検査課職員が病院の薬品、器材を使用して勤務時間中に病院外より依頼された検査物の検査をなし、いわゆる検査料を収受費消している事実を知りながら、検査課長としての職責上当然になすべきこれの制止をせず、また直属上司や病院管理者に確認や報告の措置をとらず、以後も自ら参与のうえ、従前同様の方法を続けたのみならず、B医院、C精神病院等に外部検査の規模を漸次拡大したものであり、これは日本赤十字社就業規則九五条本文、七号、一〇号、九四条七号、八号所定の「職務に関し不当に金品を受領したとき」「越権専断の行為があったとき」「職員たる体面を涜し又は信用を失う行為があったとき」に該当するものというべきである。 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒権の濫用〕 以上の認定説示によってみると、監督義務の点を除けば、原告の所為とD、E、Fの各所為との間に、その情状において隔絶するものがあるとは到底認められず、むしろDの情状は原告より重いというべきである。なお退職したGを除くその余の参与者の加功程度が前記四名に比し極めて軽微であることは上来の認定説示から明らかである。 しかるところ、原告に対する懲戒処分が解雇であるのに対し、D、E、Fの懲戒処分は、《証拠略》によれば、いずれも日額二分の一宛の減給であって、その数額は、D一三五六円、F一一四五円、E一二〇〇余円である。(なお原告の直属上司である検査部長Hに対する措置は訓戒である)ことが認められるのである。なるほど原告は臨床検査課長として検査課職員を監督すべき職責を有したことは否定できないが、この監督義務があったとの一事を前示の原告の加功程度に附加することによって、解雇と減給半日分との較差を招来する情状に至るとは到底認められないものといわざるをえない。 これら上記諸事情を綜合考察すると、外部検査の導入は地域社会の医療に貢献するからこれの実施は無許可であっても許容される余地がある旨の原告の考えが全くの独断かつ謬見であること、A日赤の他の科が謝礼等を受領したりまたX線写真廃液を業者に引取料を提供させて払下げているとしてもこれらが原告ら検査課職員のした外部検査の違法を正当化ないし減軽するものとみなしえないこと、原告らのした態様の外部検査がその後中止され原告自身反省していることも原告のなした過去の違法行為の評価を左右しないこと等原告に不利な一切の事情を考慮に容れても、なお被告の原告に対する本件解雇は苛酷に失し懲戒権行使の裁量の範囲を著しく逸脱したものとして懲戒権の濫用にあたるものというべきである。 |