ID番号 | : | 03463 |
事件名 | : | 旅費手当金等返還請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 海外技術協力事業団事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 海外技術協力事業団が募集した日本青年海外協力隊調査員の海外派遣に関し、事業団が調査員の不適格を理由に派遣契約を解約したケースで被派遣者が受領していた費用を不当利得として返還を請求した事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 民法703条 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 解雇事由 / 職務能力・技量 |
裁判年月日 | : | 1975年1月30日 |
裁判所名 | : | 浦和地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和44年 (ワ) 454 |
裁判結果 | : | 棄却(確定) |
出典 | : | 時報786号70頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇-解雇事由-職務能力・技量〕 元来隊員については日比両国間に取り決めがあって免税特権が供与されていたが、調整員については取り決めがなかったから、被告を調整員としてフィリピン政府から免税特権の供与を受けるためには隊員とは別個の取り決めが必要であったにもかかわらず、原告は被告を調整員として派遣するときは当然免税特権の供与が受けられるものと軽信し、免税特権の供与未定のまま漫然昭和四三年九月九日被告と本件派遣契約を締結したが、被告に免税特権を供与するにつき相手国フィリピン政府と合意が成立したのは同年一二月一七日に至ってようやくのことであったから、原告の被告派遣計画は極めて杜撰であったのみならず、昭和四三年九月九日原被告間に締結された本件派遣契約には免税特権に関して何らの取り決めがなく、免税特権の供与がなければ派遣しない旨の取り決めがない限り原告は免税特権の供与の承認の有無にかかわらず約定派遣日である昭和四三年九月一二日には被告を派遣しなければならないのであるから、原告は債務不履行の責任を負うべきであり、他方前記認定のとおり被告は国立A大学大学院博士課程の研究テーマである「開発途上国の開発に伴う教育計画の問題」の研究に資するため開発途上国の現地の実態を見聞する必要上隊員を志願し(その後原告の都合で調整員に変更した)、右大学院を休学し高校の非常勤講師及び家庭教師の職を捨てた程であったから、被告が派遣遅延については不安と焦燥に駆られ、妻子をかかえて生活費に窮した挙句、原告に対し執拗に派遣及び生活保障につき要求し、原告事務局の職員らに対し原告当局を非難するビラを配布し、派遣遅延三箇月後に原告事務局の建物の奥の訓練所裏の宿泊棟三階のベットに寝転ろんでハンガーストライキをしたことは、聊か行過ぎの感を免かれないが、必ずしも理解し得ないものではなく、これを責める原告の態度は自己の不手際による責任に頬被りしてこれを他人(被告)に転嫁するものというべきであり、以上の事情を斟酌すると、原告が被告に対し本件派遣契約を解除し嘱託(調整員)を解職する意思表示をしたことは、原告の責に帰すべき事由に基く債務不履行であるのみならず、権利濫用として許されないものであって、到底原告主張のような巳むを得ざるものということはできない。 |