ID番号 | : | 03466 |
事件名 | : | 懲戒免職処分取消請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 北海道郵政局事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 全逓中央本部からの指令に基づくストライキにおいて支部執行委員長が管理職の全逓旗撤去作業の妨害行為、会計課長に対する傷害行為を行ったとして懲戒免職処分とされた事例。 |
参照法条 | : | 公共企業体等労働関係法17条 国家公務員法82条 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 違法争議行為・組合活動 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の濫用 |
裁判年月日 | : | 1975年2月26日 |
裁判所名 | : | 札幌地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和44年 (行ウ) 31 |
裁判結果 | : | (控訴) |
出典 | : | 時報771号3頁/訟務月報21巻5号1015頁 |
審級関係 | : | 控訴審/03286/札幌高/昭54. 3.29/昭和50年(行コ)3号 |
評釈論文 | : | 慶谷淑夫・判例評論199号37頁 |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒権の濫用〕 処分説明書に記載のない事由を処分の理由として主張し、当該処分を正当づけることは原則として許されないが、処分説明書に記載されない事実であつても、処分をなすに際し単に量定の情状として考慮した事実は、量定に必要と認められる限度でこれを主張することは差し支えないものと解するのが相当である。 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-違法争議行為・組合活動〕 被告主張の原告Xに対する処分理由のうち、一応懲戒事由に該当する非違行為として認め得るものは、前認定のとおり【1】北見郵便局管理職の全逓旗などの撤去作業に対する妨害行為(被告の主張一(二))、【2】同郵便局庶務会計課長に対する傷害行為(被告の主張二)の二点のみであるところ、右【1】の行為は本件の処分説明書に記載されない事実であるから、前説示により情状としてのみ考慮されるべきものである。 そして、前認定の各事実によつて考えれば、【1】の行為は管理職の正当な職務行為を妨害したものであるけれども、全逓旗などの形状、大きさおよびその掲示内容に照らすと、それらは組合の団結を強化しようとする意図から掲出されたものであるうえに、掲出された場所は職員通用門付近であつて、一般利用者の出入する玄関とは離れており、撤去作業が行なわれたのは土曜日の午後三時三〇分ころからであつて、一般利用者が来局する時刻ではなく、原告Xが妨害した管理職の職務も一般利用者に向けられたものではなく、全逓旗などの撤去というもつぱら組合に対して向けられた職務行為であつたものと解されるのであるし、また、【2】の行為は前記本間に暴行を加え傷害を負わせたものではあるが、それは、全逓旗などの撤去および旗竿の破損に対する組合員の抗議から発展したデモ行進中に行なわれたもので、計画性は全く認められないうえ、原告Xが本間を積極的にデモの隊列に引きずり込んだものでもないのである。以上のとおり、原告Xの【1】【2】の行為は、いずれもさほどの情の重いものとは考えられない。 一方、原告Xに対してなされた懲戒免職処分は生活の基盤を全く失わせる結果を招来する重大な処分であることはいうまでもなく、被処分者はこれによつて経済的不利益のみならず、社会生活関係においても種々の不利益を被るであろうことは推測に難くなく、その者の収入によつて生計を維持している家族の受ける不利益もまた重大である。 以上述べたところを総合して考えるならば、【2】の事実を基本的な事実として原告Xに対し免職の懲戒処分を選択することは明らかに苛酷に失し、必要な限度を超えるものというべきであるから、本件懲戒免職処分は懲戒権の濫用として違法というべきであつて取り消しを免れない。 |