ID番号 | : | 03468 |
事件名 | : | 懲戒免職処分取消請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 北海道郵政局事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 全逓の組合員である札幌郵政局の職員が当局に対する抗議行動の名のもとに管理者に対して脅迫的言辞をはき、器物を破壊し、施鍵のある他人の部屋に侵入するなどの行為をしたことを理由として懲戒免職処分とされたことにつきその効力を争った事例。 |
参照法条 | : | 国家公務員法99条 国家公務員法82条 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の濫用 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務妨害 |
裁判年月日 | : | 1975年3月11日 |
裁判所名 | : | 札幌地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和44年 (行ウ) 30 |
裁判結果 | : | 認容(控訴) |
出典 | : | 時報771号13頁/タイムズ324号179頁/訟務月報21巻5号1032頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-業務妨害〕 国家公務員法第九九条は、職員はその官職の信用を傷つけ、又は官職全体の不名誉となるような行為をしてはならない旨規定し、又同法第八二条は、同法又はこれに基づく命令に違反した場合、職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合、および国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合には懲戒処分をなし得る旨規定しているものであるところ、国家公務員が全体の奉仕者として公共の利益のために誠実に勤務すべき一般的義務を負うものであるから、より高度の倫理基準を要するものというべく、しからば右にいう品位、信用を保つ義務に違反した場合および非行のあつた場合とは刑罰法規に触れる違法行為に出た場合がこれに当るのは勿論、これに限られず、他人に対し暴言を吐く等の行為に出た場合をも含むものと解するのが相当である。 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒権の濫用〕 もつとも原告ら労働者は団結権および団体交渉権を保障されるべきであるから、原告らの前示行為につきこれを前記品位および信用を保つ義務に違反しおよび非行のあつた場合というためには、その保障の範囲外に逸脱したものといい得ることが必要と解すべきである。しかして右団結権および団体交渉権の行使もその時、場所、人数、態度において社会通念上合理的な基準に適合するものでなければならないものというべく、労働組合の統制を外れ、無秩序に多数をたのんで交渉を求める等のことはこの右保障の範囲外に逸脱したものというべきである。ところで前記認定の原告らの行為の中には、いわゆる団結権の行使とみられる部分もないではないが、原告らの右行為は、その行使の方法、態様等において団結権の行使としての正当性の範囲を逸脱しているものと言わざるを得ない。 (中略) 原告らの本件非違行為は何れも幾春別局における労使関係が悪化していた状況下においてなされたものであつて、右労使関係の悪化については、幾春別局管理者の前示の如きいわゆる二組結成に対する支援的態度がその原因の一班をなしていたものと考えられること、原告らの本件各非違行為自体いわゆる春闘の一環であると同時にこのような管理者側の態度に対する抗議行動としてなされたものであること、および前示のとおり被告が主張する各原告らの非違行為のうち傷害などの重い結果を生じたものは全て証拠上認められないことを合わせ考慮すれば、原告らの本件非違行為は決して看過することはできないものであるが、しかし乍ら管理者側の態度なり行動を棚に上げてこれと密接に関連する原告らの非違行為のみをとらえて原告らに対し、最も重い懲戒に当り、原告らの生活の根拠を奪うに至るべき解雇に付した本件処分はその選択につき極めて苛酷にすぎ、懲戒権の濫用と言わざるを得ず、本件懲戒解雇処分はこの点ですでに違法であると言べきである。 |