ID番号 | : | 03475 |
事件名 | : | 雇用契約確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 財団法人小倉地区労働者医療協会・三萩野病院(本訴)事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 労働者や低所得者の医療を目的とする病院が、事業拡張の必要から雇入れた医師の診療方針・方法も一因となって経営悪化を招き、経営上やむをえないとして行った整理解雇の効力および右整理解雇に反対して就労闘争を行った医師の違法行動を理由とする解雇につき、その効力が争われた本訴の事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 労働基準法89条1項3号 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇の要件 解雇(民事) / 解雇事由 / 業務妨害 |
裁判年月日 | : | 1975年3月31日 |
裁判所名 | : | 福岡地小倉支 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和47年 (ワ) 743 |
裁判結果 | : | 棄却(控訴) |
出典 | : | 労働民例集26巻2号232頁 |
審級関係 | : | 控訴審/福岡高/昭54. 6.18/昭和50年(ネ)217号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇-整理解雇-整理解雇の要件〕 一般に解雇は労働者に重大な脅威を与えるものであるから、軽々に行われるべきでないことはもちろんであるが、労働者に特段の「責に帰すべき事由」がないいわゆる整理解雇の場合にあつては、極めて厳格な要件が必要とされるものというべく、その要件としては、(一)人員整理を行なわなければ倒産必至という客観的事実があつて、その人員整理が合理化の最も有効な方法であること、(二)人員整理に至る過程においてこれを回避し得る相当の手段を講じたこと、(三)被解雇者の選定が客観的且つ合理的な整理基準の適用に基いたものであることが必要であり、右(一)ないし(三)の要件を備えて始めて企業経営上やむを得ない場合として整理解雇が許されると解すべきであつて、これらの要件を具備しない整理解雇は解雇権の濫用であり無効であるというべきである。 (中略) 整理解雇の要件(三)の客観的で合理的な整理基準の設定と適用について更に審究するに、凡そ企業が実施すべき整理解雇のため設定すべき整理基準の合理性は当該企業の業種と規模、人員整理の必然性等を総合して具体的にその有無を決定する外ないのであるが、一般的にいえば、整理による倒産回避の趣旨を逸脱しない範囲において、従業員中再雇傭の蓋然性と人件費が高い地位、職種の労働者をより低い地位、職種の労働者に優先して整理の対象とすることが合理的であり、病院企業における勤務医師の場合にあつては、公知のとおり、現在の日本の医療制度下において医師一般が就職面、所得面について他の職種と比較してある種の特権的地位を保証されていることもあつて、特段の事由のない限り、他の病院従業員に対する場合以上に解雇自由の法原則の適用が巾広く認められて然るべきものと解する。 しかしてこれを本件についてみるに、被告が、前叙の経緯に基き、整理解雇の実施を具体化するに当り、当時の勤務医師八名につき、一般職員との協調性、患者からの信頼度、病院の業績向上への寄与度、勤務態度等に基き医師三名を対象者として選定すべき旨の整理基準の設定にはなんら不合理な点は存在しないのであつて、合理的な整理基準の設定という要件に欠けるところはない。 〔解雇-解雇事由-業務妨害〕 以上1ないし3の事実は之を総合するまでもなく、そのいずれもが、市井無頼の徒の所業と異ることなく病院従業員としての品位を疑わせるに充分であり、就業規則一五条一項八号の「従業員を解職するに足る重大な事由」に該当する。 しかして成立に争いのない乙第一一〇号証の一ないし三、一一一号証によると、所定の解職手続をとつていることが認められるから、原告X1、同X2、同X3に対する第二次解雇が有効であることは明らかである。 |