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ID番号 03482
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 四十八商会・三十二商会事件
争点
事案概要  印刷工場での労災事故について雇用主と法形式上別会社である企業が実質上の使用者であるとしてその責任が問われた事例。
参照法条 労働基準法10条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 使用者 / 使用者の概念
裁判年月日 1975年5月20日
裁判所名 神戸地
裁判形式 判決
事件番号 昭和49年 (ワ) 67 
裁判結果 一部棄却(控訴)
出典 時報799号74頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労基法の基本原則-使用者-使用者の概念〕
 (一) 《証拠略》によると、訴外A、同B、原告は、被告Y1会社に雇われ、事故当時前記工場で作業していた者であるが、(1) 《証拠略》によれば、本件事故についての労災保険の事業主は被告Y1会社となっていることが認められるが、《証拠略》によると、被告Y2会社において、原告の本件事故による事故時からの休業について、休業および給与不支給の証明書を同被告名で発行していることが認められ、(2) 《証拠略》によれば、被告Y1会社の印刷工場は、事故前葺合区吾妻通にあったのが事故のあった現在場所に移転したもので、右移転の際、これにより右工場は被告Y2会社の工場と合同した旨被告Y1会社の従業員らはきいていることが認められ、(3) 《証拠略》によれば、被告らはいずれも、布袋、麻袋などの製造、再生修理等を営業目的とするものであると認められ、(4) 《証拠略》によると、被告Y1会社のもとの工場は葺合区吾妻通のCビルの前にあったが、右被告の事務所は同ビルの中にあり、原告が入社した当時入社勧誘の新聞広告は、訴外D株式会社の名でなされ、右被告の従業員らに対する給料の支払もCビルの会計兼庶務係がなしていたことが認められ、(5) 《証拠略》によると、被告Y1会社の代表社員であるEは、訴外D株式会社の取締役であり、被告Y2会社の代表取締役F、同取締役G、同監査役Hは、それぞれ右訴外会社の取締役、同、監査役であること、原告は本件事故の見舞金として、被告Y1会社の外、原告主張の如く、右訴外会社、被告Y2会社、同Y1会社外一名の従業員一同から、および右訴外会社九州支店従業員一同から、並びに右訴外会社の代表取締役である訴外Iから、それぞれ見舞金を受領していること、以上が認められ(以上の認定を左右するに足る証拠はない)、右(1)ないし(5)の各事実を併せ考えると、被告らは形式上別会社であるが、極めて密接な関係にあり、少くとも本件事故の発生した印刷工場においては、被告Y1会社に雇われた訴外A、原告らは実質的に被告Y2会社の事業にも従事していたものと認めるのが相当である。