全 情 報

ID番号 03484
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 林兼造船・宝辺商店事件
争点
事案概要  船舶の密閉された場所で特殊塗装工事に従事中ガス爆発により重傷を負った下請負人が注文主を含めて損害賠償の責任を求めた事例。
参照法条 民法415条
民法1条2項
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任
労基法の基本原則(民事) / 使用者 / 使用者の概念
裁判年月日 1975年5月26日
裁判所名 山口地下関支
裁判形式 判決
事件番号 昭和45年 (ワ) 176 
裁判結果 一部棄却(控訴)
出典 時報806号76頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労基法の基本原則-使用者-使用者の概念〕
〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務〕
 被告Y1会社は、被告Y2会社に対し、構内での作業については原則として孫請を許さない方針であったので、右Aは、本件船舶等の塗装工事については危険も伴うことから、孫請の許可申請をしても承諾を得られないだろうと考え、被告Y1会社に対しては、原告ら下請作業員を被告Y2会社の従業員であると報告して入構させ、労働者災害補償保険の取扱上も、原告らを同被告の従業員として届出ていた。
 以上の事実関係に徴すると、原告は、被告Y2会社の指揮命令の下に本件塗装工事を行っていたものというべきであり、その実態に着目するならば、同被告の従業員と何ら変りない立場にあったものと認められ、両者の間には、単なる民法上の請負契約にとどまらず、労働契約と同視すべき契約が成立していたものといわざるを得ない。
 ところで、被告Y2会社は、原告は本件塗装工事を自己が雇用した前記Bほか一名と一組になって施工していたものであり、同被告の帳簿上も原告が行った工事の対価の支払の費目は外注費となっており、原告と同被告との関係は、実質的にも請負契約であった旨主張する。
 なるほど、原告が自己が雇用した前記Bほか一名と一組になって本件塗装工事を施工していたことは前記認定のとおりであり、《証拠略》によれば、同被告の帳簿上は、本件事故発生までは、原告が行った工事の対価の支払の費目が外注費となっており、原告が同被告から供与を受けた機械器具の使用料等が右外注費から差引かれていたことが認められるけれども、これらの事実は前記のとおり原告と同被告との関係が法形式上請負契約であることの当然の帰結であり、このことが前記認定の妨げとなるものとは解されない。
 従って、被告Y2会社は、原告を被用者と同然に使用していたものであり、自己の従業員に対するのと同様に、原告に対し、労働災害を防止しその危険から原告の生命及び健康を保護すべき労働契約上の義務に類する義務を負うことは当然である。