ID番号 | : | 03495 |
事件名 | : | 破産債権確定請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 日本建設協会事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 退職後会社が破産したため退職金債権を破産裁判所に届出たところ、破産管財人から異議を述べられたため、破産債権の確定を請求した事件の控訴審の事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法3章 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 退職金 / 破産と退職金 |
裁判年月日 | : | 1975年11月20日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和49年 (ワ) 4985 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 下級民集26巻9~12号962頁/時報801号86頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔賃金-退職金-破産と退職金〕 (一) 控訴人が昭和三六年六月、会社に入社し、昭和四五年三月三一日に退社し、従って右在職年数が八年九ケ月余となること、昭和三九年頃より退職時までの間は、控訴人は会社の取締役となっていたことは、当事者間に争いがない。 (二) 被控訴人は、控訴人が取締役に就任した時、会社を一たん退職して、その時まで保有していた会社の使用人としての身分を失なったと主張する。ところで、取締役の地位と使用人の地位とは、法律上両立しえないものではないから、会社の使用人であった控訴人が取締役に就任したからといって、直ちに同人が使用人の身分を失なったものと解することはできない。そして、本件においては、控訴人が取締役に就任する直前に、会社を退職したとの事実については、これを肯認するに足りる証拠はない。かえって、《証拠略》によれば、控訴人は、取締役に就任した後も営業部長を兼ねており、実際にも使用人としての職務も行ない、かつ、使用人としての月々の俸給を受けており、退職時である昭和四五年三月当時における同人の基本給は、月額金一〇万九六七〇円であったことを認めることができる。よってこの点に関する被控訴人の主張は採用することができない。 (三) 次に被控訴人は、会社の退職金に関する規定によれば、退職金が支給されるためには、「円満退職する時」に限られるところ、本件の控訴人の退職は、円満な退職ではなかったから、控訴人には退職金請求権がないと主張するので、この点について判断する。 《証拠略》によれば、会社の社員給与規定の第一〇条には、社員が「円満退職する時に」退職金を給する旨定められていることが明らかである。しかし、さらに甲第二号証の二(就業規則)をもあわせて判断するならば、右にいう「円満退職」とは、懲戒処分による免職を除くその余の退職をすべて含むものと解するのが相当である。そして、本件退職が懲戒処分による免職でないことは、弁論の全趣旨より明らかなところである。よって被控訴人のこの点に関する主張もまた採用することができない。 (四) 次に、《証拠略》によれば、会社の退職金規定によれば、八年以上在職した使用人に対しては、退職時の基本給の一二ケ月分を退職金として支給することが定められており、右規定は、昭和四三年一月一日より実施されたものであるが、同日以前より在職して同日以降に退職した者については、右規定の実施以前の在職期間もそのまま算入されていたことを認めることができる。従って控訴人の退職金額は、退職時の基本給(月額)金一〇万九六七〇円の一二倍即ち金一三一万六〇四〇円となることは、計数上明らかである。 三、以上のとおり、控訴人は、会社に対し、金一三一万六〇四〇円の退職金請求権を有し、右は商法二九五条、破産法三九条の各規定により、いわゆる優先破産債権にあたるものであるから、被控訴人に対してこれが確定を求める控訴人の本訴請求は理由があるので、これを認容すべきである。しかるに原判決は、これと異なるので取消すこととし、控訴費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用のうえ、主文のとおり判決する。 |