ID番号 | : | 03504 |
事件名 | : | 懲戒処分取消請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 向日町郵便局事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 郵政省就業規則による組合休暇については、客観的に業務の正常な運営が妨げられるような具体的事由がある場合に限って不許可にすることができるとして、不許可のまま組合会議に出席したことを理由とする戒告処分が無効とされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項9号 |
体系項目 | : | 休職 / 組合休暇 解雇(民事) / 解雇事由 / 無届欠勤・長期欠勤・事情を明らかにしない欠勤 |
裁判年月日 | : | 1974年2月22日 |
裁判所名 | : | 京都地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和45年 (行ウ) 13 2 |
裁判結果 | : | 認容(控訴) |
出典 | : | 時報745号100頁/タイムズ310号277頁/訟務月報20巻6号132頁 |
審級関係 | : | 上告審/00489/最高一小/昭52.10.13/昭和52年(行ツ)16号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔休職-組合休暇〕 (三) 以上の認定事実から、組休の性質とその付与基準について、次のことが結論づけられる。 (1) 組休制度は、法令にその根拠をもたず、使用者が一方的に定める就業規則に基づく制度で、その具体的な運用基準が通達に委ねられているという形式面に着目すれば、組休は、労働協約によつて、組合員に与えられた権利であるとするわけにはいかない。 しかし、組休制度は、組合の組織や運営を円滑ならしめ、その権利行使に実質的な保障を与える目的機能を有する反面、それが恣意的に運用されるときには、かえつて組合に対する支配介人の手段として利用される危険を伴うものである。従つて、組休制度の経緯はともあれ、一旦組休を制度として認めた以上は、その運用は一定の客観的な基準に拘束された適正なものでなければならず、使用者側の一方的な都合によつてその取扱を区々にすることはできないものといわなければならない。とりわけ、郵政職員に認められた組休制度は、当初は労使双方の合意に基礎を置き、組休の対象となる組合活動の範囲は、労使双方の交渉によつて取り決められたものであることに鑑み、組休が、当局の単なる便宜供与であることを理由に、当局の恣意的運用が許されないことは当然である。 そこで、当裁判所は、組休の性質は、労働協約上権利として組合員に与えられたものではないが、そうかといつて、当局が何時でも一方的に奪える単なる便宜供与といつた軽いものではなく、強いていうならば、実質上権利に近い便宜供与であると解する。 〔解雇-解雇事由-無届欠勤〕 (2) 原告は、二九日の組休が不許可であるのに組合の委員会に出席したが、これによつて現実に生じた業務支障の程度は軽微に止まつた。すなわち、向日町局の二月中における保険料集金率(九割六分一厘)は他の月における従来の実績(九割七分)に比べてやや低率ではあつたが、その差は特に顕著といえる程のものではなかつたし、原告の担当区域における集金の遅れは三月一日、二日で殆んど取り戻され、これによる実害や契約者からの苦情はなかつた。 このような事情は、本件組休願を一部不許可にした被告局長の判断に合理性を欠いていたことの証左になる。 (3) このようにみてくると、原告の本件組休願を二日とも許可したとしても、向日町局の保険業務に回復しがたい支障や停滞を生じ、そのため郵政事業の公益性、社会性が損われることが予想されるような具体的事由が客観的にあつたとは、到底いえないし、他にこのような事由があつたことが認められる証拠はない。 (四) そうすると、被告局長の本件組休願の一部不許可は、業務の支障がないのに、それがあるとの誤つた判断にもとづくもので、なんら正当なものではないことに帰着する。 そうである以上、原告が不許可のまま休暇をとつて組合会議に出席したとしても、このことをもつて本件戒告処分の理由にはならないから、その余の判断をするまでもなく、本件抗告処分は、違法であり取消を免れない。 |