ID番号 | : | 03507 |
事件名 | : | 地位保全仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 飯塚タクシー事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | タクシー運転手の賃金につき総収入の一定率を歩合給として支払う旨の協定がある場合、運賃改訂にともなう増収分についても、協定が改訂されるまでは従前の率で支払うべきとされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 労働組合法16条 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 労働契約と労働協約 |
裁判年月日 | : | 1974年3月14日 |
裁判所名 | : | 福岡地飯塚支 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 昭和49年 (ヨ) 6 昭和49年 (ヨ) 7 昭和49年 (ヨ) 8 昭和49年 (ヨ) 9 昭和49年 (ヨ) 10 |
裁判結果 | : | 認容 |
出典 | : | 時報755号112頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 市川俊司・労働法律旬報856号78頁 |
判決理由 | : | 〔労働契約-労働契約上の権利義務-労働契約と労働協約〕 記録によれば、申請人がその主張の如き労働組合であり、被申請人らの雇傭乗務員中にその組合員を有していること、その組合員らのため、別紙(一)ないし(五)に記載の協定書に基く賃金に関する協約を締結して歩合給を定めていること、昭和四八年一一月以降のいわゆる石油危機に対処するため、その主張の通り暫定運賃が認可され、実施されたこと、被申請人らの賃金支払がその主張の如く翌月一〇日払となっていることは明らかである。 更に記録によれば、被申請人らが申請人に対し、夫々申請人主張の如く暫定運賃増収分の分配につき交渉の申入を為し、また新らたな協定が成立するまで、暫定的に昭和四九年三月以降支払の賃金に関して、歩合給は旧料金を基準としたい旨通告をしたこと(但しあらたな合意ないし賃金協定が成立するまでとし、成立したときはその内容に応じて清算しようというものであった)も認められる。 しかして、本件暫定運賃が燃料不足等に対応するための暫定的な緊急措置であったことは記録中昭和四九年一月二六日付福岡陸運局長発の書面(写)にてらして明らかであり、営業車の燃料(主としてLPガス)の供給不足による走行粁数の減少に伴う乗務員の収入減に対する手当の趣旨を含んでいたことは疎明があるというべきである。 そうしてまた記録によれば申請人が被申請人らと夫々締結した別紙(一)ないし(五)に表示の協定書に基く賃金協定の歩合給は一定の金額を控除した運賃収入の残額につき一定の割合を乗じた金額をもって歩合給を定めることを骨子とし、これら賃金の協定に当っては、いずれもその当時認可され施行されている運賃を基準として協定されていることも否定できない。 そこで、右歩合給に関する協定が運賃改訂に際してその後あらたな合意が成立するまでの間、どのように適用されるかを検討するに、本件記録中の各疎明資料を綜合すると、従前の運賃改訂に際しては各被申請人について別紙(六)の通り処理されたことの疎明がある。 これらの従前の経緯に前記各賃金協定の内容をあわせて検討すると、運賃改訂後新らたな合意が成立するまでは新運賃収入を含む総収入に従前の歩合率に基き歩合給を算出し暫定的に支払う趣旨に本件各賃金協定を解釈すべきものである。そうして、本件暫定運賃も右認定の趣旨にてらして、その例によるべきものと解するのを相当とし、被申請人らが協定未成立を理由に賃金支払期が到来したにもかかわらず暫定運賃に基く増収分につき歩合給の支払を留保すべきものではない。よって申請人は右賃金協定締結の当事者として、被申請人にその履行を求め得るもので、被保全権利に関する申請人の主張はこれを採用することができる。この認定に反する疎明資料は措信できない。 |