ID番号 | : | 03509 |
事件名 | : | 地位確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 金沢大学医学部事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 国立大学医学部および同附属病院医局に所属する副手、研究員、臨床研究生、臨床研究医の身分は非常勤の国家公務員であり、私法上の雇用契約類似の無名契約は存在せず、右契約上の地位にあることの確認請求が棄却された事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法9条 |
体系項目 | : | 労基法の基本原則(民事) / 労働者 / 大学助手・講師・教師 |
裁判年月日 | : | 1974年3月15日 |
裁判所名 | : | 金沢地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和45年 (ワ) 311 |
裁判結果 | : | 棄却・却下(控訴) |
出典 | : | 労働民例集25巻1・2合併号124頁/時報735号43頁/訟務月報20巻7号34頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労基法の基本原則-労働者-大学助手・講師〕 このように研修と勤務が渾然一体として行われ、被教育者側面のみでは、その実態に則した説明ができない以上、副手等は国立A大学医学部及びその附属病院に勤務する職員として取扱うべきである。そして、このような勤務関係に立つ者に対して研修が行われたとしても、これによつて、その者が勤務者であることを否定することにはならないし、これと矛盾するものでもない。しかし、このような考え方に立つとしても、副手等の法的地位を結論づけるには、以下述べるような諸点が考慮されねばならない。 (一) 国立A大学医学部においては、教授会の決議により医学部副手内規及び医学部研究員内規を制定し、医学部長が副手又は研究員の委嘱をする旨定めているが、これは被告国が国立A大学の設置者として法律、政令等で定めるものを除き同大学の管理運営に関する事項を同大学の自主決定権に委ね、同大学では右の授権を受けて国立A大学管理規程(成立に争いのない乙第九号証)を制定し、そこで医学部の管理運営権を一定の範囲で医学部教授会に委ねていることに依拠するものである。また、国立A大学は国立A大学臨床研究生規程(後に国立A大学臨床研究医規程と改正)を制定し、医学部長が臨床研究生(後に臨床研究医)の受入れ許可をする旨定めているが、これも国立A大学が文部大臣裁定による授権を受けて制定したものである。従つて、副手等の委嘱又は許可は、医学部長が被告国の代理人たる地位においてなしたものであり、これによつて生ずる身分関係は国との間に生じたものであつて、委嘱、許可の主体は国というべきである。 (二) 次に、国立A大学医学部及び同附属病院は、いずれも公益上の必要から国の立法によつて設置、開設された教育研究施設であると同時に公衆保健に寄与するための診療を行う機関であり、そこで行われる業務は公務であり、そこで副手等が従事する診療、文部教官の教育研究の補助等の業務は、文部教官の指揮命令によつて従事するもので公務であるといわなければならない。 (三) 更に、副手等の身分(職制)及び勤務関係をみるに、採用資格、業務内容、委嘱又は許可期間、報酬の有無、診療協力謝金の支給及びその金額の変更、身分の改廃等は、いずれも国立A大学医学部内規及び文部大臣裁定に基づく国立A大学規程によつて一方的に決定され、これについて当事者双方が対等の立場で合意をなすということは全く予定されていない。 (四) 以上に述べてきたように、身分関係発生の主体が国であること、従事する業務が公務であること、身分及び勤務関係が大学の内規、規程によつて一方的に規律されていることからすると、副手等の勤務関係は、公法上の法律関係であるとみるべきであり、その身分は、一般職の国家公務員というべきである。しかし、副手等は国立A大学所定の勤務時間中、常時大学のための業務に従事するものではなく、その間に自分自身のための自主的研究を行い、一週のうち何日かを市中病院にパートタイム医師として勤務することもあり、また一年のうち三か月から四か月程度は関連病院へ出向してそこでの診療業務に従事する実態からすると、非常勤の国家公務員というべきである。 |