全 情 報

ID番号 03510
事件名 労働契約存在確認等請求事件
いわゆる事件名 恩賜財団済生会事件
争点
事案概要  大学病院の無給医局員が関連病院へ出張して勤務する関係を期間の定めある雇傭契約によるものとし、期間満了にともなう更新拒絶が権利濫用にあたらないとされた事例。
参照法条 労働基準法2章
民法1条3項
民法628条
体系項目 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め)
裁判年月日 1974年3月15日
裁判所名 金沢地
裁判形式 判決
事件番号 昭和48年 (ワ) 329 
裁判結果 棄却(確定)
出典 時報735号103頁
審級関係
評釈論文 浜田冨士郎・判例評論189号36頁
判決理由 〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕
 2 以上のとおり、原告は国立A大学病院第一外科医局会議に所属し、第一外科における診療、研究等を本業とし、B病院への出張はいわば副業であったこと、原告は五月を起点とし四か月単位で組まれた医局会議の出張計画に従ってB病院へ出張してきたこと、原告は医局会議によって指名されて一方的に出張してきたもので、B病院は事前に履歴書の提出を求めたり面接するなどの選考手続を行っていないこと、原告は給与等において正式医とは区別される出張医としての待遇を受けていたこと、昭和四五年五月に全日勤務医師の出張が始まって以来医局会議から派遣されてくる医師はほとんど四か月ごとに交替しており、四か月の経過前に勤務をやめたC医師の場合については、D医師がその残余期間のみ勤務し、また五か月勤務したE医師の場合については、四か月経過の時点でE医師とB病院との間で一か月の延長について話合いがなされていること等の事実からすれば、原告とB病院との間において、医局会議の出張計画とそれに基づく医師の交替出張の慣例に従い、原告の勤務(雇傭)期間についても、医局会議の昭和四六年度出張計画の始まる同年五月一日から起算して二回目の四か月が経過する同年一二月末日までとする旨の合意が黙示的になされたものと認めるのが相当である。即ち、本件雇傭契約には雇傭期間を昭和四六年一二月末日までとする期間の定めがあったものというべきである。
〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕
 4 なお、期間の定めのある契約を締結した臨時職員が、その期間満了の際も自己の雇傭関係が終了せず、契約の更新によって引き続き雇傭されるであろうという期待を持っており且つその期待が経営内の慣習や契約締結の事情などから合理的な根拠を有すると判断され、更に期間の定めが劣悪な労働条件を押し付けることを狙いとするなど、労働法規の制約を免れるための脱法的意図によるものである場合には、これを期間の定めなき雇傭契約と解することができよう。かかる場合に期間満了により雇傭関係を終了させることは、実質的に解雇というべきであり、それが権利濫用にあたるときは無効と解すべきである。
 しかし、本件においては、期間の定めは原告ら医局員及び国立A大学病院側の必要に基づくものであって、脱法的意図は全くなく、またB病院において出張医の雇傭期間が反覆更新されつつそれが常態化しているというような事情も存在しない。したがって、本件雇傭期間を実質的に期間の定めなき契約と解する余地もないものといわなければならない。