ID番号 | : | 03512 |
事件名 | : | 損害賠償請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 平田プレス工業事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | プレス機の上型落下による手首切断の事故につき、使用者に安全保証義務違反があったとされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 民法415条 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任 |
裁判年月日 | : | 1974年3月27日 |
裁判所名 | : | 前橋地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和45年 (ワ) 247 |
裁判結果 | : | 一部認容・棄却(確定) |
出典 | : | 時報748号119頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務〕 労働契約は基本的には労働者が使用者に対して労務に服すことを約し、これに対して使用者が報酬を支払うことを約す双務有償契約であるが、労働者は使用者の指揮に服しその指定した労務給付場所に配置され、使用者の提供する設備、機械、器具等を用いて労務供給を行うものであり且つ信義を守るべき義務があるから、これに対応し右労務契約に含まれる使用者の義務は単に右報酬支払義務に尽きるものではなく、右の諸施設から生ずる危険が労働者に及ばないように労働者の安全を保護するし義務も含まれているものといわなければならない。けだし、右のように労働基準法等が安全及び衛生について使用者の遵守すべき事項を定めたのは、もとより直接には国に対する公法上の義務というべきであるが、使用者が右義務を尽さなければならないことは、更には労働者としても充分生命身体に危険が生ぜず安全に就労しうることを期待して労働契約を締結するものであり、且つ使用者としても右のような安全を労働者に対して保証したものとみるのが相当であるからである。 (中略) 五、そこで、右一ないし四を綜合して考えるに、前記一(三)記載のとおり本件プレス機の一行程は三電気回路全てを使用するものであって、連続行程は二電気回路を用いるものであるから、若し一行程の積りでスイッチを押してもこれが確実に入らぬ場合には一電気回路が稼働せず、結果として連続工程として作動する場合も考えられないではなく(従って前記第三項二の当時の足踏み式スイッチでは注意がとかく途切れ勝ちとなるので妥当を欠く)、又、当時前記第三項一(二)記載のとおり本件プレス機には地上より一、一〇〇ミリメートルの高さに五光連安全機が設けられてはいるがこれ丈の高さではとかく作業者において不自然な姿勢をとらず作業してみても右安全機の死角に入る場合も考えられないではなく、これらについては被告会社技術主任である訴外Aにおいて本件事故前日のいわゆる二度落ちの際ソレノイドハルブ内部電磁コイルのレアショートなる原因を突きとめてこれを取替えた、本件事故当日始業前本件プレス機を約二〇回位試動させてみて異常を認めなかった旨証人A、同Bは各供述し、又前記三(二)記載の安全教育も過去施しこれも大切ではあるが、これらを以てしても右考えられる事柄までの瑕疵の検査には至らず、しかも被告会社としては右考慮される事柄について本件のような事故が発生しないよう然るべき措置を採ることが可能であったから(現に前橋労働基準監督署において、安全機の取付について死角のないよう再点検すること、プレスの作動スイッチは共同作業の場合全員がスイッチを押さねば作動しない方式をとることなどの監督指導が行われていることが《証拠略》によって認められるのである)、被告において、前記安全保証義務を尽したかどうか疑問であるといわざるを得ず、又被告の不可抗力の抗弁も成り立ち得ないといわなければならない。 すると、被告は債務不覆行に基き、原告に対し本件事故によって生じた原告の損害を賠償する責任があるといわなければならない。 |