ID番号 | : | 03517 |
事件名 | : | 雇傭関係存在確認請求控訴 |
いわゆる事件名 | : | 日本電信電話公社事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 公務員についてのレッド・パージ事件につき、官庁等の機密を漏らすなど秩序を乱し、または乱すおそれのある者の排除を命じた趣旨とされた事例。 |
参照法条 | : | 日本国憲法14条 労働基準法3条 国家公務員法78条3号 |
体系項目 | : | 労基法の基本原則(民事) / 均等待遇 / 信条と均等待遇(レッドパージなど) |
裁判年月日 | : | 1974年4月26日 |
裁判所名 | : | 東京高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和44年 (行コ) 25 昭和44年 (行コ) 27 |
裁判結果 | : | (上告) |
出典 | : | 東高民時報25巻4号67頁 |
審級関係 | : | 上告審/最高二小/昭50. 3.28/昭和49年(行ツ)60号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労基法の基本原則-均等待遇-信条と均等待遇(レッドパージなど)〕 すなわち、第一審被告主張の連合国最高司令官の指示に基づく処分が、たとえわが国の憲法の規定に反しても、これを講和条約発効前にさかのぼって無効とすることのできないことはいうまでもないことである。ところで、同指示の内容及びその適用範囲を理解するには、厳にその指示の意味内容を確め、それが憲法の規定に反することがないようにできるだけ限定的に解釈、適用するのが、わが国及びわが国民のとるべき態度でなければならない。次に、同指示の内容及びその適用範囲は、当裁判所に顕著な当時発表されていた同司令官からのわが国総理大臣宛数次の書かんにおける記載のみでは、必ずしも明瞭ではないけれども、当時その指示の内容及び適用範囲として政府が了解し、かつ、その実施に関して決定したものは原判決書添付・別紙(二)及び(三)に記載の各閣議決定に示されているとおりであることは、第一審被告がみずから主張するところであり、それらによれば、当時、わが政府は、右連合軍最高司令官の指示は、公務員にも適用されるものであること及び公務員が共産主義者またはその同調者で、官庁等の機密をもらし、業務の正当な運営を阻害するなどしてその秩序をみだし、またはそのおそれのある者をその地位から排除すべきことを指示されたと了解していたものと解されるのである。そうとすれば、右指示は、一般的に憲法第一四条の規定に反してまで、単なる共産主義者またはその同調者であることのみの理由で公務員をその地位から排除すべきことをわが国政府に命じたものではなく、それらの信条をもつほかに、さらに官庁等の機密をもらすなどその秩序をみだしまたはみだすおそれのある者を排除すべきことを命じたものと理解されるのである。もっとも、特定の公務員が右指示された者に該当するか否かの判断は、わが国の各当局者に委され、その秩序等をみだしまたはみだすおそれは、いわゆる抽象的な危険をもって足り、その公務員の属する官庁等において具体的に認定されるいわゆる具体的危険を要するものではない(そのことがいわゆるレッド・パーヂと称されるゆえんであり、具体的危険はあえてレッド・パーヂをまつまでもなく懲戒、分限上の措置で排除されうる。)ことは、これまた右各閣議決定等によって明らかである(なお右のいわゆる具体的危険の有無に言及した最高裁判所昭和三〇年一一月二二日言渡同庁昭和二九年(オ)第三五五号事件判決(民集九巻一二号一七九三頁)は、たまたま、具体的危険があると認定された事例にかかるものであって、抽象的危険のみでは足りないことまでをも示している事例ではない。)そして、それら閣議決定等によれば、当時、日本共産党が公然と反社会的・反民主々義的、暴力的手段を用い、わが国の立憲政治を転覆するのに都合のよい状態を作り出すような社会不安をひき起そうと企てているとしているので、その認識からすると、あたかも日本共産党員であることは、同時に、官庁等の機密をもらすなどその秩序をみだし、またはみだすおそれのある者に該当すると認定し、前記指示によって公務員の地位から排除されるべき事由に該当するとしているかのようにみられないでもない。しかし、もし、そうとすれば、その排除の根拠法令をあえて国家公務員法に求めるならば、同法第三八条第五号を摘示し、同号所定の事由に該当することを理由として同法第七八条第三号を適用するのが自然であるのに、右第三八条の摘示をしないで単に第七八条第三号のみを根拠法条としているところからすれば、やはり、単に共産党員であることだけで、同時に前記のように秩序をみだしまたはみだすおそれのある者と認定してはおらず、その認定のためにはそのような秩序をみだし、またはみだすおそれがあるとの附加事由を必要としていたものと解される。そのことは、また、当時日本共産党はいわゆる非合法政党ではなく、それ自体としてわが国政上政党活動をすることが公認されていたことは公知の事実であること及び前記司令官の指示内容等を理解するのに重要な資料であるとされた原判決添付・別紙(三)記載のエーミス労働課長の談話内容にも、いわゆる私鉄従業員についてではあるが、共産主義の積極的指導者等のみを排除の対象者として列挙していることからも明瞭である。 |