全 情 報

ID番号 03521
事件名 賃金請求事件/雇用関係不存在確認本訴請求事件/同反訴請求事件
いわゆる事件名 東京印刷紙器事件
争点
事案概要  休職期間満了にともなう解雇が不当労働行為にあたり無効とされ、「従業員の勤務成績に応じて賞与を支給する」旨の協定によっては、賞与請求権を有するわけではないが、平均賞与額相当の損害賠償請求権は有するとされた事例。
参照法条 労働基準法24条
体系項目 賃金(民事) / 賃金請求権と考課査定・昇給昇格・降格・賃金の減額
裁判年月日 1974年5月28日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和47年 (ワ) 9385 
昭和48年 (ワ) 6790 
昭和48年 (ワ) 9006 
裁判結果 一部却下・認容・棄却(控訴)
出典 時報761号110頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔賃金-賃金請求権と考課査定・昇給昇格・賃金の減額〕
 五 原告の賃金請求について
 (一) 原告主張の第六項の(一)は当事者間に争いがない。
 (二) 月別賃金について
 (1) 同四七年五月から同四八年一月まで
 原告主張の賃金月額は、七五、〇〇〇円の限度では当事者間に争いがないが、これを超える額を認めるべき証拠はないから、七五、〇〇〇円であり、被告は原告に対し、同四七年六月に支給すべき同年五月二一日から翌六月二〇日までの一か月の賃金七五、〇〇〇円と、同年七月以降同四八年一月まで毎月七五、〇〇〇円およびこれに対する支給日の翌日である毎月二六日から完済まで商事法定利率年六分の遅延損害金を支払うべきである。
 (2) 同四八年度および同四九年度における組合と会社間の昇給協定の内容が原告主張のとおりであることは、当事者間に争いがないところ、右協定によると、昇給額の査定に当っては会社の査定分が考慮されているから、右協定に基づき原告が直ちに、一般従業員の平均昇給額を加算した額に昇給したことを前提として昇給後の賃金請求権を有すると解することはできない。しかし、本件解雇の意思表示は、前記判断から明らかなように不法行為を構成するというべきであるから、原告の勤務成績が平均の従業員より劣っていることの主張・立証のない以上、平均昇給額を加算した賃金相当の損害賠償請求権を有しているということができる。
 そうだとすると、同四八年二月から同四九年一月までは七五、〇〇〇円×一・一六+一、〇〇〇円の月額八八、〇〇〇円、同四九年二月以降は八八、〇〇〇円×一・二五+一、五〇〇円の月額一一一、五〇〇円となり、被告は原告に対し、右額の損害金とこれに対する毎月二六日から完済まで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金を支払うべきである。
 (三) 賞与額について
 (1) 同四七年上期分
 組合と会社間の同四七年度賞与協定の内容が原告主張のとおりであることは当事者間に争いがないところ、原告は支給対象期間である同四六年一一月二一日から四七年五月二〇日までの大半(終期は同四七年二月末の前記復職の拒否決定時)を病気により欠勤・休職していたものであり、成立に争いのない乙第四五号証(給与規程)によると、賞与は「従業員の勤務成績に応じて」支給される旨定められているから(三八条一項)、果して原告に賞与が支給されるものか、またその額が幾らであるかは一切明らかでなく、したがって原告は本賞与に関する請求権はない。
 (2) 同四七年下期分以降
 同四七年下期分、同四八年上、下期分および同四八年一一月特別賞与についての、組合と会社間の協定内容および支給日、特別賞与の算定方式および支給日が原告主張のとおりであることは、当事者間に争いがない。ところで賞与は、前述のように従業員の勤務成績に応じて会社が支給すると定められており、かつ弁論の全趣旨から明らかなように、前記協定においても会社の考課査定分が含まれていることが認められているから、一般従業員に支給されたことから直ちに原告に賞与請求権があるとは解せられず、結局月別賃金の場合と同様、不法行為による平均賞与額相当の損害賠償請求権を有しているというべきである。