全 情 報

ID番号 03524
事件名 時間外勤務手当等請求事件
いわゆる事件名 三重県教職員事件
争点
事案概要  地方公務員たる教員の時間外勤務手当請求権につき、クラブ活動の指導、高校体育連盟主催の大会への引率等は労働時間にあたるとされた事例。
 勤務時間の割振りの変更、休日の振替が行われたときは、代休日を与えられた勤務時間は超勤時間から差引くべきとされた事例。
参照法条 労働基準法32条
労働基準法35条
労働基準法37条
体系項目 賃金(民事) / 割増賃金 / 支払い義務
労働時間(民事) / 労働時間の概念 / 教職員の勤務時間
休日(民事) / 休日の振替え
裁判年月日 1974年6月6日
裁判所名 津地
裁判形式 判決
事件番号 昭和43年 (ワ) 136 
裁判結果 一部認容・棄却(控訴)
出典 時報746号19頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働時間-労働時間の概念-教職員の勤務時間〕
 五 そこで、原告らが前記認定の明細表記載の日時に同「勤務内容」欄記載の行事に参加したことが原告ら教職員の職務の範囲に属し、校長の明示又は黙示の命令に基づくものであるか否かについて検討する。
 (一) 遠足および修学旅行の付添、運動会、体育祭、文化祭について
 学校教育法施行規則五七条、五七条の二の規定に《証拠略》を合わせ考えると、右掲記の原告ら主張の行事は各教科、科目等とあいまって高等学校教育の目標を達成するため教育活動の一部として学校が年間を通ずる計画のもとに実施するものであることが認められ、右事実に徴し、特段の事情のない限り、同行事に参加することは教師の職務であるとともに校長の命令に基づくものといわなければならない。
 (二) 高校体育連盟等主催の各種大会の選手引率、付添について
 《証拠略》によれば、三重県高等学校体育連盟は、高校におけるスポーツの健全な発展を目的として県下の各高校によって組織され、教育長が顧問、校長、教職員が理事、専門部長等の役員に就き、経費は高校生徒の負担金および県からの補助金によってまかなわれ、高校生の対外競技のため諸体育大会を開催することを主たる事業とする団体であり、右大会は前記役員によって教育的に企画運営され、正課の体育、校内競技、特別教育活動であるクラブ活動と密接な関連を有すること、そして教職員が右大会に参加する選手を引率し付添うことは右大会参加の教育効果を高めるとともに、参加選手の事故防止等のため必要であることがそれぞれ認められる。ところで、教師は学校における教科、特別教育活動および学校行事等に関する教育を掌るものであり、従って右と密接な関連を有する限り、たとえ高体連が被告県とは別個の団体であっても、右大会参加の選手を引率し付添うことは教師の職務の範囲に属するというべきである。このことは、三重県高校体育連盟の上部団体である東海高校体育連盟、全日本高校体育連盟あるいは右高体連以外の高校野球連盟、庭球協会、ハンドボール協会、水泳協会、県陸上競技会、上野市教育委員会等主催の大会であっても、校長が右大会に参加することに教育的意義を認めて参加の承認をしている限り、前記高体連主催の場合と同様に参加選手の引率、付添は教師の職務に入ると解すべきである。
〔賃金-割増賃金-支払い義務〕
〔休日-休日の振替え〕
 給与条例三四条、勤務時間等に関する規則二条によれば、校長は通常の日課にない特別の行事等を学校全体が行う場合その他正当な理由がある場合には、勤務を要する日とする日曜日の属する週の間において他の日と繰り替えることができる旨規定し、また、校長は学校運営上必要ある場合は、土曜日に割り振られた勤務時間を当該土曜日の属する週の間において他の日に割り振られた勤務時間と繰り替えることができる旨を規定するところ、原告X1につき昭和四二年一〇月二九日、同X2、同X3、同X4につき各同年一一月五日、同X5につき同年一〇月八日、同月二九日、同X6につき同年六月四日、同年一〇月二九日、同X7につき同年一〇月八日、同X8につき同年五月一四日の勤務を要する日とする各日曜日の正規の勤務時間内に行われた勤務に対してはそれぞれ他の日を代休として与えられていることは右原告らの認めるところであり、右事実によれば、右代休は校長が前記勤務時間等に関する規則により、勤務を要しない日の繰り替えを行ったものというべきであり、 《証拠略》によると、原告X2につき同年一一月四日の土曜日の正規の勤務時間内に行われた勤務に対し同月二日に代休をとったことが認められ、右事実によれば、右同様校長が勤務を要しない日の繰り替えを行ったものというべきであり、従って、右日曜日または土曜日の正規の勤務時間内に行われた勤務は時間外勤務に該当しないので、右時間は超勤時間から差引くべきである。