全 情 報

ID番号 03531
事件名 地位保全仮処分申請事件
いわゆる事件名 エール・フランス事件
争点
事案概要  一年ごとの雇用契約を更新している日本人スチュワーデスに対する肥り過ぎを理由とする更新拒絶につき、権利濫用として許されないとされた事例。
参照法条 労働基準法2章
民法628条
体系項目 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め)
裁判年月日 1974年8月7日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和49年 (ヨ) 2282 
裁判結果 認容
出典 時報750号26頁
審級関係
評釈論文 沢藤統一郎・労働法律旬報867号29頁
判決理由 〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕
 五 更新拒絶の効力
 被申請人は、前記認定のとおり、日本人スチュワーデスの停年延長の雇傭更新に際して、本社乗務員本部が当該スチュワーデスの全般的能力について不充分であると判断したときは、その更新を拒絶することができるのであるが、このような更新拒絶権を行使するにあたっては、解雇の場合に準じて、苟も恣意に流れ濫用に陥入ってはならないのであって、固より客観的に合理的理由が在することを要するものと解するのが相当である。本件更新拒絶の理由として被申請人の主張する申請人の容姿及び勤務成績上の難点なるものは、右四に説示したところにより、その理由としていずれも是認するに足りないものであることが明らかである。
 因に、申請人は、すでに昭和四七年及び四八年にそのつど一年毎に雇傭更新により停年を延長されてきたことは当事者間に争いがなく、当時体重六〇辺をマークし、とくに昭和四八年二月におこなわれた勤務評定では容姿について「シルウェット、歩容、動作が重苦しく、この職業には相容れない。」などとかなり手きびしい評価を受け、そのために一再ならず上司の助言を煩わし、ついに同年五月には薬の服用を奨められ、「容姿の点がますます重大な否定的要素となっている。」状態にあって体重の減量が当面の重要課題であったにもかかわらず、同年六月に当然のことのように雇傭更新を経ていることが前記認定により明らかであるから、被申請人が申請人の従前の雇傭更新に際して右のような容姿上の難点を理由にその更新を拒絶するようなことは勿論無かったわけである。ところが、昭和四九年度の本件雇傭更新に際しては、右のような容姿上の難点をその更新拒絶の理由に構え、しかも体重が六〇から五七に減量されているのになお容姿上の難点があるとするのは、いかにも唐突、豹変の機相を呈する仕業であると申請人ら日本人スチュワーデスに請け取られている(《証拠判断略》)のも無理からぬところといわなければならない。
 以上述べた理由により、本件更新拒絶は、被申請人が申請人に対してその更新拒絶権を濫用したものとして、もとより法律上の効力を生じないものと解すべきである。