ID番号 | : | 03532 |
事件名 | : | 労働契約存在確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 西日本警備保障会社事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 少年時代の非行歴を秘匿したことを理由とするガードマンに対する懲戒解雇につき、権利濫用にあたり無効とされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 労働基準法89条1項9号 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 経歴詐称 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の濫用 |
裁判年月日 | : | 1974年8月15日 |
裁判所名 | : | 福岡地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和48年 (ワ) 252 |
裁判結果 | : | 認容(確定) |
出典 | : | 時報758号34頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 山口浩一郎・判例評論194号38頁 |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-経歴詐称〕 三(一) ところで、前掲乙第一号証(会社就業規則)によれば、同規則第四七条第一号には懲戒解雇事由として「重要な経歴を詐わり、その他詐術を用いて雇用されたとき」が掲げられていることが認められるところ、他人の財産等の警備を行なうという被告会社の業務の性質からいって、犯罪歴は、たとえ少年時代のものであっても、一応同号にいう「重要な経歴」に該るものというべきである。しかしながら、会社が従来警備員を採用するに該って採用内定者から徴していた誓約書の文言は、前記のとおり「過去、現在に至るまで法律に違反して有罪の判決を受けたり逮捕されたり起訴された事実云々」というのであり、少年法の保護処分がこの文言のいずれにも該当しないことは明白である。しかも労働者の選択は本来使用者の危険においてなすべきことであり、求められもしないのに労働者が進んで自己に不利な事実を告知すべき義務はなく、さらに少年法第一条に定める同法の目的、後記少年法第二二条第二項第六一条の趣旨を加味しつつ考えると、社会通念上履歴書の賞罰欄に少年時代の非行歴まで記載すべき義務があるものと解することはできない。よって原告が被告会社の面接試験において非行歴を積極的に告知せず、あるいは原告が会社に提出した履歴書の賞罰欄にただこの事実の有無を記載しなかったからといって、労使間の信義則に反するものとは到底いい得ない(もっとも証人Aは、入社希望者に対し、少年時代に受けた保護処分についても賞罰欄に記載すべき旨を告げ、原告に対しては面接の際警察で取調べを受けたかどうか糺した旨証言するが、同証言は、これに反する原告本人尋問の結果に照らしてにわかに信用できない)。したがって原告が経歴詐称したという理由で従業員たる適格性を欠くとして予告解雇することは、事実の根拠を欠き、かつ会社就業規則の解釈、適用を誤ったものとして許されない。 (中略) (三) しかも、他に原告が警備職員として不適格であることを認めさせるに足りる証拠は全くなく、むしろ、《証拠略》によれば、会社入社以来解雇に至るまでの原告の勤務成績は、会社の現在の評価によっても、不可はなかったということであり、原告の主張のとおり、警士から先任警士さらに警士長にと順調に昇進し、その間一年間皆勤の故をもって表彰された事実も認めうる(昇進および表彰の事実は当事者間に争いがない)。 〔解雇-解雇権の濫用〕 (五) そうであるとすれば、本件解雇は、会社就業規則第三九条第一項第五号の解釈を誤まり、また解雇権を濫用してなされたものであるから、その余の争点に対する判断をまつまでもなく無効であり、原告は依然として会社の従業員として労働契約上の権利を保有する。それにも拘らず、被告はこれを争っているから、原告はその地位の確認を求める利益を有する。 |