ID番号 | : | 03540 |
事件名 | : | 損害賠償請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 電々公社事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 高校三年に在学中電々公社の社員公募に応じ筆記試験、作文の試験を受け合格し採用内定の通知を受けた者が卒業式を暴力的に破壊し、そのことについて反省の色をみせなかったこと等を理由として右採用内定を取消され、地位保全の仮処分を申請した事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 採用内定 / 法的性質 労働契約(民事) / 採用内定 / 取消し |
裁判年月日 | : | 1974年11月1日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和47年 (ヨ) 1208 |
裁判結果 | : | 認容(確定) |
出典 | : | 時報760号100頁/訟務月報20巻13号25頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 山口浩一郎・労働判例215号27頁 |
判決理由 | : | 〔労働契約-採用内定-法的性質〕 前敍のような一連の採用手続の中における採用内定通知のもつ意義や採用手続の実態、準拠規定の趣旨および採用内定者としての申請人の権利保護の必要等を総合的に斟酌すれば、まさに採用内定通知の発信をもつて申請人の見習社員契約の申込に対する公社の承諾の意思表示であると解するのが相当である。このように解すれば、申請人と被申請人公社との見習社員契約は右の時点、即ち昭和四六年一二月九日に成立したことになるが、採用内定通知書自体に前記のような内定取消事由が記載されていることから、公社の意思表示はこれらの事由による解約権を留保してなされたものというべきであろう。 (中略) 解約権を留保しているとはいえ、始期付見習社員契約の成立を認める以上、公社が自己の立場を一方的に強調できないことは当然であつて、解約権行使の場合の公社職員の適格性の判断は、見習社員採用内定決定前に考慮するものより厳格、客観的、慎重になされねばならないものと考えるべきであろう。そして、その際考慮さるべきは見習社員等を対象とした準職員就業規則であり、弁論の全趣旨により真正に成立したと認められる(証拠省略)によれば、同規則五八条一項七号に「職員としての適格を欠くとき」が免職事由と定められているから、これをそのまま適用することはできないとしても、見習社員契約の成立が認められる以上、ほぼそれに準じた客観的事由を必要とすると解するのが相当である。 〔労働契約-採用内定-取消し〕 以上の諸事情を考慮すると、被申請人の申請人に対する採用内定時における労働力の質の評価も、また公社の公共企業体としての社会的評価も、右卒業式問題の一事をもつてしてはいまだ決定的に影響をおよぼしたものということはできず、その他被申請人の解約(採用内定取消)を正当たらしめる事由を窺うことはできないから、結局申請人については採用内定通知書所定の解約事由の存在が認められない。 第三 被保全権利の存在 以上検討してきたところによれば、被申請人が申請人を見習社員として採用内定後、申請人に対し公社見習社員として不適当と認めるという理由で採用内定を取り消すことは、解約の事由なくして解約権を行使することになり、解約の要件を欠くが故に無効といわねばならない。 |