全 情 報

ID番号 03571
事件名 看護婦の職務にあることの確認等請求事件
いわゆる事件名 国家公務員共済組合連合会事件
争点
事案概要  病院看護婦に対する労務職たる洗濯場勤務に配転したことが労働契約の変更にあたり無効とされた事例。
 右配転を不法行為として損害賠償の支払が命ぜられた事例。
参照法条 労働基準法2章
民法709条
体系項目 労働契約(民事) / 試用期間 / 法的性質
裁判年月日 1973年5月21日
裁判所名 仙台地
裁判形式 判決
事件番号 昭和45年 (ワ) 366 
裁判結果 (確定)
出典 時報716号97頁/訟務月報19巻8号51頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働契約-試用期間-法的性質〕
 一 一般に使用者が労働者を配置転換して従前と異なる労働の提供を命ずることが、当初の労働契約の変更に当る場合には右配置転換について改めて労働者の同意が必要であり、右の同意を欠いた使用者の一方的な配置転換命令は効力を有しないと解するのが相当であつて、配置転換が使用者の専権裁量に属する旨の被告の主張は採用することができない。
 してみると、本件の場合、被告は前示のごとく看護婦の資格を有する原告を看護婦として雇傭し看護婦職に就かしめてきたのであるから、これを看護婦以外の労務職に配置転換することは労働契約を変更するものであつて、原告の同意なくして一方的命令によつてはこれを行ない得ないものと言べきである。
(中略)
 三 次に、前示配置転換に対する原告の黙示の同意の有無、信義則違反ないし権利失効の原則の成否について考察してみる。
 原告が洗濯場勤務を命ぜられて以来、被告の措置に抗議して今日に及んでいることは前項の2において述べたとおりであるから、原告が一〇余年間にわたり継続して洗濯場勤務に従事したとの一事のみでは右配置転換について原告の黙示の同意があつたものとは認め難く、また、信義則違反や権利失効の原則に該当するとも解し難く、ほかにこの点に関する被告の主張を認めるに足りる適切な証拠はない。
 以上のような次第で、前示配置転換は原、被告間の労働契約に違反し無効であるから、原告はいまなおA病院の看護婦の職にあるものというべく、被告は原告を看護婦の職務に従事させるとともに、右配置転換によつて原告が蒙つた損害を賠償すべき義務がある。