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ID番号 03602
事件名 労働契約存在確認等請求事件
いわゆる事件名 西日本鉄道事件
争点
事案概要  ワンマンバス運転手の現金所持行為に対する、懲戒処分までの暫定的措置としてなされた出勤を禁止する処分につき、予想される最終的な懲戒処分と比して均衡を失するとして、裁量権の行使を誤ったもので無効とされた事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 所持品検査
裁判年月日 1973年12月24日
裁判所名 福岡地
裁判形式 判決
事件番号 昭和47年 (ワ) 732 
裁判結果 認容
出典 労働民例集24巻6号627頁
審級関係
評釈論文 佐川一信・労働判例192号25頁
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-所持品検査〕
 一、被告会社が福岡市に本社を置き、電車軌道、自動車運送事業等を営む株式会社であり、原告は昭和三五年二月二二日被告会社に雇用され、翌三六年一二月より被告会社赤間営業所に自動車運転士兼自動車車掌として勤務していた者であること、および原告が昭和四六年七月二九日勤務終了後の午後一〇時三〇分頃、被告会社赤間営業所において、被告会社巡視員より所持品検査を受けた際、原告が所持していた免許証入れの中から現金一、一〇〇円(一、〇〇〇円札一枚、一〇〇円札一枚)および原告が通勤に使用し、同営業所に隣接するガソリンスタンドの敷地内に駐車していた同人所有の自家用車のダツシユ板ポケツトの中から現金一一五円(五〇円硬貨一枚、一〇円硬貨六枚および五円硬貨一枚)がそれぞれ発見され、被告はこれが被告会社就業規則第六〇条第一三号の「私金の携帯もしくは所持を禁止されている者が勤務中私金の証明がつかない金銭を携帯もしくは所持したとき」に該当するとして、原告をまず就業規則第八条第七号、労働協約第四九条第一項第七号を適用して、同年八月五日から同年一二月一〇日までの間出勤禁止処分に付し、かつ給与規則第三一条労働協約第一七二条を適用して右期間中平均賃金の六〇パーセントしか支給せず、さらに同月一一日付で就業規則第六〇条第一三号を適用して懲戒解雇に付し、以後原告との間の労働契約関係の存在を否認していることはいずれも当事者間に争いがない。
 (中略)
 被告会社が原告を出勤禁止処分に付した当時において、被告会社が知り、または相当の注意をもつてすれば知り得たであろう資料に基づけば、原告の本件各所為は就業規則第五九条第一七号の「私金携帯を禁止されている者が、勤務中私金を携帯したとき」には該当しても、同規則第六〇条第一三号には該当しないものといわねばならないから、原告に対する本件出勤禁止処分は、同条項の懲戒事由がないのになされたものとして、本来予想される懲戒処分(前記のごとく同規則第五九条第一七号違反の懲戒処分は出勤停止一〇日以下の処分があるにすぎない。)との均衡を失し、かつ被告会社における従来の就業規則第八条(出勤禁止)第七号の運用の経過に照しても、著しく苛酷な不利益処分として裁量権の行使を誤つた無効のものと断ぜざるを得ない。