ID番号 | : | 03606 |
事件名 | : | 仮の地位を定める仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 名古屋タイムス社事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 雇用期間三カ月の臨時雇いが無断欠勤が多い、入社関係書類が提出されていないことを理由として通常解雇されたケースでその効力が争われた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 労働基準法89条1項3号 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 解雇事由 / 無届欠勤・長期欠勤・事情を明らかにしない欠勤 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め) |
裁判年月日 | : | 1972年2月7日 |
裁判所名 | : | 名古屋地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和45年 (ヨ) 1101 |
裁判結果 | : | 却下(控訴) |
出典 | : | 時報664号93頁/タイムズ279号256頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇-解雇事由-無届欠勤〕 申請人は臨時雇として稼動を開始したばかりの時期であり五月三日の無断欠勤を除いては別段怠けて休んだわけではないのであり、加えて臨時雇の期間は、社員見習試用として採用すべきかどうかの判定をする期間でもあるのである(若し不適格者と認めたときは臨時雇の期間が満了したときに社員見習試用に採用しなければそれで十分な筈である。)。 また入社関係書類不提出についても、被申請人が五月一〇日の時点で申請人の経歴詐称の事実を知っていたと認めるに足りる的確な疎明は存しないから、被申請人としては申請人に対し、何故に入社関係書類を提出しないのかその理由を直接に質し、その結果をまって適宜の措置をとるべきが当然であり、このような措置をとらずに何らの予告もなしに入社関係書類不提出を理由に突如として通常解雇することは相当とはいえないと考える。 この見地からすれば、勤務成績不良、入社関係書類不提出を通常解雇事由として申請人を解雇することは、解雇権の濫用というべきである。 〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕 申請人と被申請人間の雇用契約は期間を六月三〇日までとする臨時雇契約であって、右期間満了に際し、契約の更新がなされるかまたは社員見習試用契約が結ばれない限りは、右雇用契約は消滅するわけである。そして右雇用契約の更新がなされたこと、ないし、社員見習試用契約が結ばれたと認めるに足りる疎明は何ら存しない。 してみると、その余の点につき判断するまでもなく、申請人は、昭和四五年六月三〇日の満了により臨時雇契約に基づく被申請人の従業員の地位を失ったというべきである。 なお付言するに、申請人が臨時雇契約締結に際し、被申請人主張のとおりの経歴詐称をしたことは当事者間に争いがなく、申請人が入社関係書類を所定期間内に提出しなかったこと、およびその理由が出身高校をいつわっていたため卒業証明書の提出が不能であったことに帰因すると思われることは先に述べたとおりである。 そして入社関係書類は、臨時雇契約の満了に際し社員見習試用に採用するかどうかの判定に必須の書類であることは前述したとおりであって申請人の前記経歴詐称の所為は、それがどのような動機でなされたにしても労使関係における信義則にもとるものというべきであり、かかる所為をなした申請人は、被申請人の社員見習試用者としての適格を欠くものというべきである。 この見地からすれば、被申請人の臨時雇契約期間の満了による雇用契約消滅の主張は別段信義則に反するとはいえない道理である。 |