ID番号 | : | 03639 |
事件名 | : | 地位保全仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 北海道電力事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 反戦集会に参加して逮捕勾留された女子従業員が勾留中に実父を通して退職の意思表示をなし依願退職が発令された後で、右退職の意思表示につき重大な錯誤があり無効であるとして地位保金の申請をした事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 民法95条 |
体系項目 | : | 退職 / 退職願 / 退職願と錯誤 |
裁判年月日 | : | 1972年7月19日 |
裁判所名 | : | 函館地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和46年 (ヨ) 145 |
裁判結果 | : | 一部認容、一部却下 |
出典 | : | タイムズ282号263頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔退職-退職願-退職願と錯誤〕 前記認定事実によれば、債権者が右意思表示をなしたのは、もしそれをなさなければ、債務者から懲戒解雇され、その結果、兄Aの就職に悪影響を及ぼすことになるであろうこと等を苦慮したためであることが明らかであり、また、債務者は、債権者が懲戒解雇になるのをおそれて右意思表示をなした事情を十分把握していたものと推認される。 ところで、債権者の逮捕勾留の基礎となつた被疑事実の詳細、有無および有とした場合の情状ならびに不起訴理由等が不明であること前記認定のとおりであるが、不起訴処分になつたことから判断して、債権者が反戦集会に参加して逮捕勾留されたという事実のみを根拠として懲戒解雇されることは通常あり得ないと思料される。現に、前記認定のとおり債務者函館支店における協議に際し、債権者を懲戒解雇処分に付すべきであるとする意見はなかつたものと認められるのであつて、債権者が依願退職の意思表示をした当時、債権者には懲戒解雇該当事由がなかつたものと認められる。そうすると、債権者が債務者に対し本件依願退職の意思表示をなした際、債権者にはこれをなさなければ懲戒解雇処分にされるという自己の法的地位についての重大な錯誤があり、右債権者の動機は、黙示的に債務者に表示されていたものといえるので、右意思表示には、民法第九五条の法律行為の要素の錯誤があつたことになる。よつて、右意思表示は無効である。 |