ID番号 | : | 03644 |
事件名 | : | 雇傭契約不存在確認請求事件/雇用関係確認請求併合事件 |
いわゆる事件名 | : | ソニー事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 雇傭期間を二カ月として反覆更新されていた「男子パートタイマー」について期間満了により雇用関係が存在しなくなったとして使用者がその不存在の確認を請求した事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め) |
裁判年月日 | : | 1972年9月29日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和45年 (ワ) 3032 昭和45年 (ワ) 4759 |
裁判結果 | : | 一部認容・棄却(控訴) |
出典 | : | 時報692号98頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 山本吉人・労働判例160号付録2頁/石橋主税・季刊労働法87号168頁 |
判決理由 | : | 〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕 被告らを含む男子パートタイマー雇用契約は、少なくとも契約当初においては、雇用の理由、動機、募集、採用手続、担当すべき労務の内容等の面からみて、景気変動に対応する雇用調整の見地から、また主として運搬、梱包等の補助作業、あるいは製造部門の一部ないしそれに付属する比較的単純反覆的で、補助的な作業に従事させることにより正規従業員の労働力不足を補填するために、一定期間を限って締結された「期間の定めのある」雇用契約と認めるほかはない。被告主張のように、勤務時間の点からすれば、世上いわゆるパートタイマーの名にそぐわないが、要は常傭的臨時工である。 被告は、被告らの担当した業務は原告会社にとって必要不可欠であり、長期継続すべき性質のものであるから、雇用期間を形式的に定めたにすぎない旨主張するが、被告らの業務がそのようなものであったにしろ、有期の雇用契約を締結するか否かは原告会社の雇用政策の問題であり、契約意思いかんにかかるところ、前記認定の事実関係からすれば、原告の明示の意思にかかわらず、期間を形式的なものとする当事者の黙示の意思を推認することは困難であるし、契約の更新が単に形式的なものであったとも認められない。また原告会社においてある程度長期の契約継続を予想していたといえても、当然に契約が更新されるものとする暗黙の合意が存したと認めるべき証拠もみあたらない。 被告は長期にわたる契約の反覆更新の事実や正規従業員と差異のない業務内容からみて、法的に「期間の定めなき」雇用契約に転化しているとも主張するが、有期の雇用契約が反覆更新されたという事実のみから「期間の定めなき」契約に転化すると解すべき根拠は見出し難いばかりでなく、そのように転換をした契機、時期も明らかではない。 また被告ら男子パートタイマーの業務内容が正規従業員のそれと差異がないと断ずることは困難である。たしかに被告の場合、製造工程に属する注型業務やコーティングの業務に相当期間従事しており、また正規従業員もそれら業務を担当した時期があったことは先に認定したとおりであるが、正規従業員がたまたまその作業に従事した限りにおいて、両者の業務内容に差異がなかったというにとどまり、被告は雑役的、補助的業務にも相当期間携わっている外、勤務時間中の作業内容にはかなり変遷がみられること前認定のとおりであって、被告の場合においても総じて正規従業員の業務内容とは一線を画されていたと認めざるをえないのである。 しかして、本件の場合、右のような有期雇用契約が反覆更新され、いわゆる常傭的臨時工という実態を呈していたところ、原告は右契約を終始有期の契約として認識、把握し、運用していたのであり、このことは昭和四四年一一月男子パートタイマーをも対象として有期雇用者就業規則を制定実施し、これを適用したところからもうかがい知られるところである。 被告は、さらに、本件パートタイマー契約は、形式的に期間を定めその身分を理由に正規従業員を差別し、劣悪な労働条件を押しつけることを狙いとしたとか、労働法規の制約を免れるための脱法的意図がある旨主張する。しかしながら原告会社における男子パートタイマー雇用契約の脱法性を認めるに足りる証拠はみあたらないし、かかる常傭的臨時工制度が社会的に多くの問題を包蔵するにしろ、前認定のところから、企業経営上全く存在理由を欠くとか、合理性がないとか断ずることも困難といわざるをえない。 (中略) 原告において、前記認定のように、男子パートタイマー制度の発展的解消を図ろうとした意図、方法は、それが労働法規の脱法的意図に出たものでないかぎり、企業経営における人事、雇用政策上の許容された裁量ないし自由の範囲を逸脱するものとは断じ難く、しかして、原告の右措置につき、右のような脱法的意図を推認しうる証拠もみあたらない。 |