全 情 報

ID番号 03650
事件名 地位保全仮処分控訴事件
いわゆる事件名 社会福祉法人のぞみの家事件
争点
事案概要  児童福祉施設の児童指導員が、職員会議において正当に樹立された施設の指導方針を尊重せず、まったく独自の方針で指導にあたり、他の職員とのチームワークを破ったとしてなされた解雇の効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法2章
労働基準法89条1項3号
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 協調性の欠如
裁判年月日 1972年11月17日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和46年 (ネ) 904 
裁判結果 控訴棄却(確定)
出典 時報690号89頁
審級関係 一審/東京地/昭46. 3.19/昭和42年(ネ)2344号
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-協調性の欠如〕
 児童生徒の指導について、控訴人の方針と被控訴人のそれと、そのいずれが正しいかは教育的見地においても容易に決定できないものであるうえに、本件はこれを決定するのに適切なところではないからこれを措くとしても、さきにも述べたように、被控訴人のような児童福祉施設内における指導は、一旦職員会議その他所定の方法によって、その方針が決められた以上は、各職員が各自の職分においてこの方針を生かすべく努力し、かつ相互に協力し合いながら職務の遂行に当たってはじめてその成果を挙げることが期待できるものであって、これに反して各職員がそれぞれ独自の方針と姿勢で指導に当たるときは、施設としての成果が期待できぬばかりか、かえって指導の効果が著しく減殺され、ときには弊害を生ずる虞れもなしとしない。
 従って、もし控訴人において被控訴人の従前の方針にあきたらず、自己の抱懐する指導上の理念ないし意見によってこれを改めようとするのであれば、園長にその旨具申するとか、職員会議において討議をつくすとかその他それ相応の手だてを講ずることにより、まずもって、職員全体の納得をえて、自己の意見を園の基本方針に反映させた上で、その実現を図るよう努力するのが当然であるのに、右(3)認定の各事実は控訴人がこのような配慮と努力を著しく欠いていることを示すものである。
 (中略)
 ここで問題なのは、控訴人が一年程度の在職期間中にこのような行為を反覆累積したことである。)、被控訴人のような児童福祉施設の指導員としての適格性において欠けるところがあるものといわざるを得ず、関係法令とその設立の本旨により、児童福祉施設としての機能を十分に果すべき責務を負っている被控訴人が、控訴人の前記行為の累積を前にして、もはや控訴人との雇傭関係を継続することが困難であると考えたことは、これを是認するに足りる十分な客観的根拠があるものというべきである。