ID番号 | : | 03656 |
事件名 | : | 損害賠償請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 合資会社伴鋳造所事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 鋳造会社において熔解炉の内壁の調査作業中、内壁に付着した銑鉄塊が落下して作業員が負傷した事故につき使用者に対し安全配慮義務違反を理由とする損害賠償が請求された事例。 |
参照法条 | : | 民法415条 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任 |
裁判年月日 | : | 1972年11月30日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和43年 (ワ) 817 |
裁判結果 | : | 一部認容・棄却 |
出典 | : | 下級民集23巻9~12合併号653頁/時報701号109頁/タイムズ288号267頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 渡辺章・ジュリスト564号116頁 |
判決理由 | : | 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務〕 雇傭契約は、労務提供と報酬支払をその基本的内容とする双務有償契約であるが、通常の場合、労働者は、使用者の指定した労務給付場所に配置され、同じく使用者の提供による設備、機械、器具等を用いて労務給付を行うものであるから、雇傭契約に含まれる使用者の義務は、単に報酬支払に尽きるものではなく、右の諸施設から生ずる危険が労働者に及ばないよう労働者の安全を保護する義務も含まれているものといわなければならない。 ところで、労働保護法たる労働基準法その他同法付属、関連法令は、使用者に対し労働者の作業過程における安全衛生につき保護すべき事項を規定し、行政的監督と命令違反に対する刑事罰とをもつてその実効を期しており、その限りにおいて、使用者の右義務は、国に対する公法上のものといえるが、しかし、そのことの故に、右義務が雇傭契約上使用者が労働者に対して負うべき私法上の義務たりえないものと解することはできない。 (中略) 本件の場合、使用者たる被告は、原告に対し、熔解炉内壁の調査作業において通常予測される落下物の衝撃に耐え得る程度の強度を有するヘルメットその他の保護帽を備え付け、これを着用させるべき義務を負担しているものと解するのが相当であるところ、証人Aの証言、原告本人・右被告代表者各尋問の結果によれば、被告は、右に説示したヘルメット等の保護帽を備え付けず、着用もさせていなかつたことが認められるから、被告は、原告に対する雇傭契約上の保護義務を履行しなかつたものといわざるを得ない。 |