ID番号 | : | 03665 |
事件名 | : | 地位保全仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 東陶機器事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 工場正門退出者に対して行われた一斉所持品検査を拒否した従業員に対してなされた懲戒解雇の効力が争われた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項9号 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 所持品検査 |
裁判年月日 | : | 1971年2月12日 |
裁判所名 | : | 福岡地小倉支 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和42年 (ヨ) 529 |
裁判結果 | : | 一部認容・却下 |
出典 | : | タイムズ264号325頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-所持品検査〕 使用者がその企業の従業員に対して行なういわゆる所持品検査は、その性質上常に人権侵害のおそれを伴うものであるから、これを必要とする合理的理由に基づいて、一般的に妥当な方法と程度で、しかも就業規則その他明示の根拠に基づき、制度として、職場従業員に対して画一的に実施されるものでなければ適法とならないものといわなければならない。そこで被申請会社における所持品検査につき右要件を検討するに、前記第二項において認定したように、申請人の勤務する被申請会社本社においては各所に多量の銅地金類、金属製品、半製品が使用、貯蔵されており、外部への持出しも不可能ではないこと、そのため他の多くの企業と同様に就業規則で従業員の所持品検査制度を規定していること、その方法は従業員の工場出入の際の一般的監視の他に、一斉検査として退勤者全員を対象として、日常携帯品以外を所持していると思われる者に対し質問し、外から所持品にさわり、まれには所持品の中味を見せるよう求める程度であつて、着衣にさわつたりその他身体検査に類するようなことは行われていないことが認められるので、被申請会社の業態からすると、より合理的な会社財産管理の方策を講じ、従業員に対する所持品検査制度を廃止することも可能であり、且つそれが望ましいことであるにせよ、特に被申請会社における所持品検査が身体検査に類するようなことは行わず、したがつて被検査者に不当に羞恥心、屈辱感を与え、人権を侵害するおそれが少ないことを重視すると、未だもつて右検査を違法と断定することはできず、したがつて就業規則三六条二項も公序良俗に反し無効であるとはいえないというべきである。 (中略) 申請人が本件携帯品検査拒否の際、職場秩序をみだすことの意図もしくは認識をもつていたことを認めるには充分とはいえず、いわんや本件拒否行為により現実に職場秩序をみだしたことは認めることができない。すなわち、申請人の本件携帯品拒否行為は、就業規則六四条五号にいう「職場の秩序をみだし、またはみだそうとしたとき」に該当しないということになり、同条の懲戒処分をなす前提たる懲戒事由は認められないことになる。 |