ID番号 | : | 03672 |
事件名 | : | 仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 岩手県経済農業組合連合会事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 農協連合会の職員において一般職員と准職員との区別を設けている場合で、准職員に対して適用される就業規則中の事務雇員の定年を三一歳とする旨の規定により定年退職とされた女子の准職員が、女子従業員のみが右准職員就業規則の適用を受けることになり、これは実質的に女子の三一歳若年定年制を定めたもので違法であるとして地位保全等の仮処分を申請した事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法3条 労働基準法4条 民法90条 日本国憲法14条 |
体系項目 | : | 労基法の基本原則(民事) / 均等待遇 / 男女別定年制 |
裁判年月日 | : | 1971年3月18日 |
裁判所名 | : | 盛岡地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和45年 (ヨ) 122 |
裁判結果 | : | 認容 |
出典 | : | 労働民例集22巻2号291頁/時報626号99頁/タイムズ260号202頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 川崎武夫・法律時報43巻11号173頁 |
判決理由 | : | 〔労基法の基本原則-均等待遇-男女別定年制〕 右(一)、(二)のとおりであるから男子の事務雇員が准職員就業規則一五条一号の適用を受けることはなく、結局右条項の適用を受ける事務雇員は女子に限られることになる。 右のようにその運用の実態によつてみれば、右条項は実質的には女子の事務雇員等に限り三一才をもつて停年とする旨のいわゆる女子の若年停年制を定めたものであると認めざるをえない。 (中略) 右労働基準法三条、四条が前記憲法一四条一項の規定を受けて私人間の法律関係をも規律するために設けられた規定であることからすれば、本件について右労働基準法三条、四条を適用する余地がありそうに思われる。しかしながら同法一一九条は同法三条、四条違反の使用者に対する罰則を定めているのであるから、罰刑法定主義の建前からして右条項を拡張して解釈することは許されないものというべきである。してみると労働基準法三条、四条は性別を理由に賃金以外の労働条件について差別することを直接禁止の対象とはしていないものと解するのが相当である。 (中略) 前記の同法三条、四条は性別を理由に賃金以外の労働条件について差別することを直接禁止しておらず、却つて同法一九条、六一条ないし六八条等は女子の保護のため、男子と異なる労働条件を定めていることが認められる。しかして右のような労働基準法上の諸規定を斟酌すると、同法は性別を理由とする労働条件の合理的差別を許容し、その反面前記したような法の基本理念に鑑み、性別を理由とする合理性を欠く差別を禁止しているものと解される。そしてこの禁止は労働法上公の秩序を構成するものと解されるから、労働条件について性別を理由とする合理性を欠く差別を定める就業規則は民法九〇条に違反し無効となるというべきである。 これを本件についてみるに、本件の停年制の内容は一般職員(事務職員を含む)の停年が五五才であるのに対して、女子の事務雇員の停年は三一才と著しく低いものであり、かつ三一才以上の女子であるということから当然に企業に対する貢献度が低くなるとは言えないから、他にこの差別を正当づける特段の事情のない限り著しく不合理なものとして民法九〇条違反として無効となると解すべきである。 (中略) 女子事務雇員の停年を三一才とし、一般職員(事務職員を含む)五五才停年と差別する准職員就業規則一五条一号の規定は著しく不合理なものであり、民法九〇条に違反して無効であるといわなければならない。なお、事務雇員等の停年を三一才と定めた昭和四四年三月二五日の被申請人と労組との間の協定も同様に無効である。 |