ID番号 | : | 03673 |
事件名 | : | 仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | のぞみの家事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 児童福祉法による養護施設の指導員が、職員会議で右施設の指導方針として定められた方針を尊重せず、これと異なる独自の方針で指導にあたったとして解雇され、その効力を争った事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 解雇事由 / 協調性の欠如 |
裁判年月日 | : | 1971年3月19日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和42年 (ヨ) 2344 |
裁判結果 | : | 却下 |
出典 | : | 労働民例集22巻2号316頁/時報639号102頁/タイムズ264号303頁 |
審級関係 | : | 控訴審/03650/東京高/昭47.11.17/昭和46年(ネ)904号 |
評釈論文 | : | 小川政亮・教育判例百選204頁 |
判決理由 | : | 〔解雇-解雇事由-協調性の欠如〕 債権者と債務者とは児童の指導についての方針を異にし、債権者はなるべく児童の欲求をかなえてやり自由に生活させようとする傾向が強かつたのに対し、債務者はどちらかといえば児童の生活を厳格に規律しようとする傾向にあつたこと、しかも債権者は自己の方針を正しいと確信し、児童指導員という職務の専門的性格を重視するのあまり職員会議できめられた方針であつても必ずしもこれを尊重せずなるべく自己の方針で指導に当たろうとしたこと、そのため他の職員を困惑させその反感をかつたことが一応認められる。 しかしながら、児童の指導上債権者の方針と債務者の方針とのいずれが教育的見地からみて正しいかは別として、債務者のような児童福祉施設内における指導は、一旦その指導方針がきめられた以上、その方針のもと職員がチームワークを発揮して各自がそれぞれの職分において協力し合いながら指導に当たつてこそはじめて指導の成果を十二分にあげうることを期待できるのであつて、職員が各自ばらばらの方針と姿勢で指導に当たる場合は施設として指導の成果を十分あげることが期待できないばかりか、かえつて指導の効果が著しく減殺され、ときには害をなす虞れすらなしとしない。このことは一般の家庭において父母がばらばらの方針と姿勢とで未成年の子の生活指導に当たつた場合を考えればあまりにも明白である。従つて債権者が債務者と異なる指導方針を有し、その言動が他の職員に困惑や反感を与えていた事実と前記認定の債務者の規模、職員構成等をも考慮すれば、仮に前記認定のような債権者の諸行為が債権者の児童に対する愛情と指導上の熱意とに基づくものであり、かつ、前に述べたように指導員にはその職務の専門的性格に鑑み一定の幅の裁量を許されているにしても、児童福祉法等関係法令と設立目的とにより児童福祉施設としての機能を十分に果すべき責務を負つている債務者がもはや債権者との雇傭関係を継続してゆくことが困難であると考えたことは、これを是認できるところである。 (中略) そうであるとすれば、本件解雇の意思表示はまつたく理由もなく恣意的になされたというものではなく、債務者においてやむをえない措置としてなされたものとみることができるから、右解雇の意思表示を信義則違反とか解雇権の濫用とか認めることはいまだ困難である。したがつて、本件解雇の意思表示は無効とはいえない。 |