ID番号 | : | 03675 |
事件名 | : | 労働契約関係存在確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 福井放送事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 人事課長に対する虚偽の事実に基づく刑事告発、虚偽のビラ配布を行ったことを理由として解雇された放送会社の従業員が右解雇の効力を争った事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項3号 民法628条 労働組合法17条 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 解雇事由 / 名誉・信用失墜 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 労働契約と労働協約 |
裁判年月日 | : | 1971年3月26日 |
裁判所名 | : | 福井地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和43年 (ワ) 55 昭和43年 (ワ) 115 |
裁判結果 | : | |
出典 | : | 労働民例集22巻2号355頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 菅野和夫・ジュリスト506号157頁/瀬元美知男・労働法の判例〔ジュリスト増刊〕131頁/蔦川忠久・季刊労働法84号104頁 |
判決理由 | : | 〔解雇-解雇事由-名誉・信用失墜〕 被告は、反に就業規則該当の解雇事由が認められないとしても、原告らの前記誣告やビラ配布行為により、被告と原告ら間の信頼関係が破壊されてしまつたから、民法六二八条により、雇傭契約を解除するのだと主張する。 民法六二八条は「やむことをえざる事由」ある時は、雇傭契約を解除することができる旨定めているが、右の「やむことをえざる事由」とは使用者の事業が不可抗力に基づいて全部または一部廃止せねばならなくなつた場合などを予想しているので、被告主張のような信頼関係の破壊などは本条の予想するところではない。なるほど、雇傭契約にあつては、使用者と労働者との間に信頼関係の存在することは必要であり、そのためにこそ、その具体化された行為を解雇事由として就業規則や労働協約に列挙するのである。したがつて、原告らの同一行為をとらえて信頼関係の破壊だと主張したとしても、抽象的に表現しただけのことであり、具体的な行為として就業規則の解雇事由に該当せぬ以上、解雇事由になりえない。 五、右にみたように、被告が本件解雇事由として主張するところは、何れも認められないから、本件解雇は正当事由を欠くものとして、解雇権の濫用となり無効たるを免れない。 〔労働契約-労働契約上の権利義務-労働契約と労働協約〕 労働組合法一七条は四分の一に満たない労働者が組合を結成している場合には、適用を除外する旨の明文の規定をおいてないこと、また右の少数組合が、多数組合の締結した協約よりも、さらに有利な内容の協約成立を目的として団体交渉、団体行動をすることは自由であるから、多数組合の協約を少数組合に適用しても、少数組合の自主性を奪うことにはならない。ただ、多数組合の締結した協約の内容が少数組合の既有の権益を侵害するものであれば、その限りにおいて右協約の適用が制限されることのあるのは当然である。のみならず、拡張適用の余地を残しておくことは力関係で弱い立場に立たされた場合の少数組合に多数組合の協約の限度までは保障することになり、実質的にみた場合の自主性尊重に適すると思料されるからである。 |