ID番号 | : | 03680 |
事件名 | : | 地位保全仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 国鉄動労入園闘争事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 公労法一七条一項違反の争議行為を理由とする懲戒免職処分が懲戒権の濫用にあたり無効とされた事例。 争議行為に利用する目的で有給休暇が請求された場合、使用者は時季変更権を行使することなくこれを拒否できるとされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法39条 労働基準法89条1項9号 公共企業体等労働関係法17条 |
体系項目 | : | 年休(民事) / 年休の自由利用(利用目的) / 一斉休暇闘争・スト参加 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 違法争議行為・組合活動 |
裁判年月日 | : | 1971年4月27日 |
裁判所名 | : | 札幌地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和41年 (ヨ) 126 |
裁判結果 | : | 一部認容・棄却(控訴) |
出典 | : | 時報634号18頁 |
審級関係 | : | 控訴審/札幌高/昭48. 5.30/昭和46年(ネ)143号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-違法争議行為・組合活動〕 前記認定によれば、二月一七日から一八日にかけての組合側の抗議行動の中で申請人両名の言動は参集した他の一般組合員に比べると激しいものであり、節度を欠いたものがあると認められてもやむを得ないものがある。従って、その原因が何であるにせよ、申請人両名の行為が懲戒事由を定めた被申請人の就業規則六六条一七号にいう「職員として著しく不都合な行為」に該当するものであることは、敢えて多言を要しないところであり、申請人両名がなんらかの懲戒処分を受けるのもまた当然であるといわなければならない。 3 しかしながら、申請人両名が参加した区長らに対する組合側の抗議は徹夜に及んだとはいえ、その間当局側の申出により数度休憩の時間が挟まれ、その都度組合員らは組合事務所へ引揚げており、従って、外部との連絡も自由な状態にあったと認められるばかりでなく、区長が予め待機させることを考慮していた公安職員に対してなんらかの具体的要請をしたことを認めるに足る疎明もないから、結局組合側の抗議行動の雰囲気も極度に緊迫していたとまでは認められない。また、前記事実によれば、当夜の組合側の抗議行動は全般的にみる限りA追分支部委員長ら支部組合三役、地本からオルグとして派遣されたB地本副委員長ら組合幹部を中心としてその指導により行なわれたものであって、申請人両名の言動も他の一般組合員同様その場の雰囲気に同調し、概ねAら幹部の行動に追随したに過ぎないものということができ、ただ、たまたま両名が当局側の者に最も近い位置に座していたことにより、その存在が他の一般組合員より注目をひいたものと推測することができる。 一方、当日の右抗議行動の直接の発端は当局がC、D両名を乗務途中で交代させ組合が反対する受験に赴かしめたということにあることは明らかであるが、これは当局側が組合との取決めにもかかわらず入園試験を強行しようとする態度のあらわれであり、また、当日のE助役のその場しのぎ的な判断により予め徒労に終ることを知りながらAらを札幌まで赴かせたこと及びその後の区長らの示した瞹眛な言動が組合側の抗議を大きくしたものと認められ、区長らにかかる不手際がなければ、或いは抗議行動がかくも長時間にわたらず、また、辞職届、謝罪文の作成という異例の事態を招かなかったであろうと推測することさえできるのである。もっとも、区長及びE助役は右抗議行動を受けた後入院又は通院しているが、右両名は抗議行動の終った一八日午前八時ころから終日勤務し、年休処理に忙殺されていたのであるから、これによる疲労蓄積も考えられ、右入院等の責を申請人両名にのみ負わせるのは相当ではない。 更に、申請人両名の場合は後記認定のように列車運行に影響を及ぼすような闘争を指導した申請人X1とは異なり、その行為が直接被申請人の業務運営に著しい対外的支障を与えたものと認むべき資料もない。 4 以上の諸事情を考えると、被申請人が懲戒権の行使として免職を選択することは、自己の非を顧ることなく、いたずらに申請人両名のみを責めることに帰し、その行為の態様等からみて均衡を失した処分といわざるを得ないから、申請人両名に対する本件免職は懲戒権の濫用として無効であるといわざるを得ない。 〔年休-年休の自由利用(利用目的)-一斉休暇闘争〕 申請人両名はいかなる目的に有給休暇を利用するもそれは労働者の自由であることを理由に使用者が労働者に対し休暇請求の理由を示すことを求めることは許されない旨主張する。しかし、申請人両名のような公共企業体職員が有給休暇を違法な争議行為に利用することが許されないのはいうまでもないことであって、被申請人はかかる目的の下になされた休暇請求に対しては時季変更権を行使することなくこれを拒否できるものと解すべきところ、前記事実関係によれば、支部組合員による前記有給休暇申請は業務停廃を目的とするものでこれを認めれば被申請人の列車運行業務に支障を生じることが当然予測できる事態であったから、被申請人としても右請求の許否を決する資料として病気を理由とするものについて診断書を要求することはなんら違法ではないし、その際、信頼度の高い診断書を得るため特定の医師を指定することも許されるものというべきである。 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-違法争議行為・組合活動〕 3 しかしながら前記一の1の(二)の入換速度規制、これに附随してなされた(六)の組合員の機関車への無断乗込み及び(四)の有給休暇闘争についてはこれによる列車運行業務への支障は前記のとおり相当広範にわたっており、一方札幌地本及び傘下組合が入園問題について主張する先任順位による選抜制度は少なくとも古年者が減少してきている段階においてはすでに述べたとおり年功序列を重んずるさして合理性を有しないものであると思われるのに、これを貫徹するため、前記のように国民生活に重大な影響を与えるおそれのある争議行為としての入換速度規制及び有給休暇闘争に訴えたことは、その有する企業の公共性からみて黙過しがたいものがあるといわなければならない。そして、病気欠勤届が認められる有給休暇扱いを受けながら、その間かかる行為について前記のように書記長として指導的役割を果した申請人X1の責任は重大であり、その行為は懲戒事由にいう「著しく不都合な行為」に該当し、かつ懲戒免職に値するものといわなければならない。また、病気欠勤届が認められ有給休暇の扱いを受けながら、その間有給休暇闘争に参加した申請人X2も同様右懲戒事由に該当するものといわなければならないが、同申請人は前記のように本件闘争開始直前に支部委員長を解任され一組合員として参加したに過ぎず、特に指導的役割にあったと認むべき疎明が存しない以上、既に認定した無許可集会への参加等の事実を考慮に入れても、解雇としての懲戒責任を追及するには重きに失するものと認めざるを得ないから、同人に対する本件免職は懲戒権の行使を誤ったものとして無効とすべきである。 |